「晶・・頼むから、もう、無理を言わないでくれ」

 オレは、声をかすれながら晶に頼んだ

 晶はどうしても、オレに自分の胸を温めろと言う

 小さな頭を、横にいっぱい振って、凛とした目をオレに向ける

 「皇兄・・皇兄にとって、私は、血の繋がったたった一人の妹なんだよね?」

 あぁ、そうだよ

 「風邪引かせたくないんだよね?」

 当たり前だ

 オレに何を言わせたい?。どうして今日のお前はこんなにオレを困らせる

 「あぁ、お前は大事な妹だ」
 
 晶から、目を逸らし、オレは呟く。何回・・妹だと言わなければならない?

 「じゃぁ、その妹が寒いと、皇兄・・の体温で温まりたいと言ってるの。妹なんだもの温めてくれるよね」

 晶・・なぜこんなに妹だと強調する?

 「私・・雨が止んだら、ちゃんと家に帰るし、これから先、もう皇兄にこんな無理言わないから、だから」

 
 皇紀・・皇紀
 もうひとりの自分に問いかける
 大丈夫だよな。晶を抱きしめても、抑えられるよな

 晶が、あまりにも真剣で、必死で懇願してくるのに、それを跳ね返す事は出来なかった

 オレはシャツのボタンに手をかけた。濡れたシャツで抱きしめても、晶を余計濡らすだけ

 シャツを脱ぎ捨て、下のTシャツへと手をかける

 「ふぅ」
 どこからともなく、息が自然に漏れた

 「あ・・」
 そんなオレの姿を見ていた晶が、赤くなってうつむいた

 あ・・
 この小屋に入って、ようやくいつもの晶に出会えたような気がした

 そう、これが晶
 オレの裸を見て、真っ赤になって照れている

 そして、オレはいつもみたいにちょっとイジワル言ってみる

 「・・どうした?お前が望んだんだろ?このシャツもぐしょ濡れだから脱がないとダメなんだが・・止めるか?」

 未だ、顔をあげない晶の姿が可愛くて、笑みがこぼれる

 さっきみたいな無茶な晶には、驚かされたが、やはりいつもの晶がいいな

 晶の髪を撫でながら、オレは冗談ぽく続けた

 「はぁ、今回はマジ参った。良く考えたなこんな悪戯。それとも会長に何か吹き込まれたか?あの人悪戯好きだから」

 ポンポンと晶の頭を叩き、オレは脱いだシャツを拾い上げ、雨の様子を出口に見に行った

 ほんとに、性質が悪い。今回降り立ったオレの前の小悪魔は・・