「そ・・そうだね。私ってバカだね」

 晶は、オレの言葉にうなづき、前髪をかきあげると同時に両目から涙を流していた

 泣きたいのは、オレの方
 好きな女が、目の前にいるのに、泣かせる事しか出来ない

 「ほら、お前はすぐに泣く。さぁ涙拭いて、雨がやんだらここを出るからな。風邪でも引かれたらオレが母さんに怒られるだろ」

 ダメ押しに、母さん・・と口にした

 「ん・・わかった。ケホ、ケホ」
 晶の乾いた咳。顔も赤みかかり、吐く息が白い

 「ほら、風邪ひいたんじゃないか?熱みせてみろ」

 晶の形のよい額に手を当てる
 熱い・・な。やはり、雨のせいで発熱したか

 「少し熱があるな・・寒いか?」

 「・・寒い。皇兄・・私寒い」

 晶は小刻みに、身体を震わせ、鳥肌が首をつたり、顔全体に現れていた

 「困ったな。他に何か着れる物をー」

 押入れの中にまだ着れる物があるといいが、立ち上がるオレの手を晶が掴んだ

 どうした?疑問符を投げかけるオレに

 「皇兄が温めて」・・と晶が呟いたように・・思えた・・

 気のせいだよ・・な?
 オレの聞き間違いだ。晶がこんな事言ってくるはずがない

 押入れに再び目をやると

 「温めて」
 と今度ははっきりと聞こえてきた

 晶はオレの手をしっかり掴んで、放さない

 温めろって・・
 オレのシャツも雨で濡れてるし、他に着るものも・・

 晶の掴む力が強くなった

 晶を温める・・オレに出来る事といったら・・

 「どこが寒い?腕か?」
 晶の細い腕を白衣の上から優しくさする

 摩擦で少しでも温かくなれば・・

 でも、違うと晶は大きく首を振った

 「じゃぁ、背中か?」
 均等な骨格の背中を撫でた

 それも違うと晶は首を振る

 「私が寒いのは・・ここなの」

 そう言って、晶は自分の胸に手を当て、オレを真っ直ぐ見た

 オレの息が止まる
 
 「私、胸が・・」

 「悪い晶。温めてやれない。オレはそこに触れること出来ない」
 晶が最後まで言う前に、オレは、即答していた

 それだけは絶対に出来ない

 お前の女の部分に触れることなど、絶対に出来ない

 触れたら、ようやく抑えて来たお前への欲情が姿を現してしまう