本当は分かっていた

 皇兄の私に向けられた優しさは、私が妹だからって事

 私だけが特別なのは、血のつながりがあるからだって事

 「温めて」
 私は再度、皇兄にお願いした

 雨が止んで、家に帰ったら、また元の生活に戻ってしまう
 
 兄と妹
 妹として一生、皇兄と接していかなければならない、その前に・・・・

 ・・・・皇兄の身体の体温を直接感じたい

 これが最後。これが最後のワガママだから。お願い、皇兄

 そしたら、この後はちゃんと妹に戻るから、私の最後の願いをー

 「どこが寒い?腕か?」
 皇兄は、私の腕をとり白衣の上からさすり始めた

 私は大きく横に首を振った

 「じゃぁ、背中か?」
 皇兄の手が背中全体をさする

 違うよ・・。確かに体全体が鳥肌が立って、寒気はする
 けど・・私が寒いのは、私が寒いのはね

 「うううん。私が寒いのは・・ここなの」

 私は自分の胸に手を当て、皇兄を見た

 「な・・」
 皇兄は息を呑んで、私を見る

 私は、とても無理な事を言っている。そんな事わかってる

 「私、胸が・・」
 
 「悪い晶。温めてやれない。オレはそこに触れること出来ない」
 皇兄は首を横に振る

 「・・・・」

 「そこは、自分でさすって、お前の手の届かない所をオレは、さするからそれで」

 「嫌」
 皇兄が最後まで言う前に、私は首を横に振った

 「晶・・頼むから、もう、無理を言わないでくれ」
 皇兄のかすれた声が、頭に響いてくる

 皇兄が困っている。私は愛しい人を困らせてる

 いつもの私なら、ここで諦めてしまうけれど・・でも、ごめんね皇兄。今日の私は覚悟が違うの
 
 皇兄と触れられるなら、私は妹の立場を利用する

 「皇兄・・皇兄にとって、私は、血の繋がったたった一人の妹なんだよね?私に風邪をひかせたくないんだよね?」

 「あぁ、お前は大事な妹だ」

 「じゃぁ、その妹が寒いと、皇兄・・の体温で温まりたいと言ってるの。妹なんだもの温めてくれるよね」

 お願い・・本当に最後のお願い

 「私・・雨が止んだら、ちゃんと家に帰るし、これから先、もう皇兄にこんな無理言わないから、だから」
 
 お願い・・私を抱きしめて 

 皇兄はゆっくりと、自分のシャツに手をかけ、ボタンを外しはじめた