皇兄の手・・あったかい。もっと強く握ってみようかな

 「うぁっ!」
 手に力を入れようとした時、皇兄はまるでお化けでも見たかの様に、身体を震わせ私の手を払いのけた

 つかの間の・・温もり

 私に触られるの・・嫌なの・・?

 気まずい空気が私達の間に流れている。何か話を・・私達の今の共通の話と言ったら・・

 「皇兄、かえるなんだけど」

 今思いつく話題は、これしかなかった

 「左後ろ足欠けちゃった。大丈夫かな?治る?」

 手の平に乗せたかえるとおたまじゃくしのガラス細工を皇兄に見せる

 こわばった表情の皇兄から、ホッとした表情に戻った

 「欠けた破片があれば、接着剤で直すことが出来る。大丈夫だ」

 かえるの欠けた破片を見ながら、皇兄は答えてくれた

 「よかった」
 よかったね。かえるさん。足が治れば帰ることできるよね

 私の足も治ったら・・皇兄の元に帰ることできる・・?

 「なに・・か・身体を拭けるものを探すから、そこで座って待っててくれるか?」
 
 私に対する皇兄の口調がいつもと違っている。まるで、私のご機嫌を伺っているような声

 ワガママ言ったから、私に遠慮してるの?私、皇兄に気を使わせてる?

 「うん。わかった」
 私が素直に返事をし、皇兄の安心した表情を見てそれを確信した

 皇兄は、さっきから一度も私の顔を見ようとはしない


 パサッと私の前に、白い衣装と赤の袴が放り投げられた
 
 「これで、身体を拭いて」
 指されたのは、赤い袴

 「これに着替えろ」
 着替えの方は、白い白衣

 皇兄が、押入れの中から探し出してくれた、巫女さんの衣装

 「ん・・」
 私は立ち上がり、ワンピースを捲くり上げた

 「ちょ・・ちょっと待て」
 皇兄が慌てて、私に背を向けた。口元に手を当てて、頭を少し擡げている

 あぁ、そうか。何も考えてなかった
 ワンピースを抜いたら、すぐに下着姿になってしまうものね

 
 皇兄・・私の事、少しは女だと意識してくれたの?
 そんなはずないか。妹の裸を、ジッと見ている方がおかしいものね

 ワンピースを脱いで、キャミソールと下着を脱ぐと、袴で頭の上から、身体全体を拭くと、白い白衣を着た

 「皇兄、出来たよ」

 「あ・・あぁ」
 皇兄は、相変わらず、向こうを向いたまま