雨は、小雨からやむ事なく降り続いている

 大きな木の葉っぱのおかげで、雨を凌ぐ事は出来ていた。その前に濡れてしまったのを除けばだけど

 不思議と寒くはない

 手の平のガラス細工を見ていると、心が温かくなった

 「かえるは、私がちゃんと帰れますように」
 良く、迷子になる私を心配して、皇兄がおまじないをかけてくれた

 「おたまじゃくしは、ちゃんとかえるに孵れますように」
 おたまじゃくしはかえるの子。ちゃんとかえるになれますように

 ホントにそうなのかな?
 何か、もっと違う意味があるような気がする

 でも、私バカだからわかんないや

 もう一度、同じセリフをかえるに、おたまじゃくしに語りかける

 早く

   「早く、帰れるといいね。私も、あなたも」

 おたまじゃくしは、かえるに。 私は、皇兄の元に

 おたまじゃくしの頭を、人差し指で小突く

 「あき・・ら!?」

 「あ・・皇兄」
 不思議と、皇兄が立っていたのに驚くことはなく。むしろ皇兄の方が驚いている様子だった

 私は手の平を大事に抱え、立ち上がる
 同時に、雫がポタポタと滝のように落ちていくが気にならなかった

 「お前、こんな所で何やってんだ!こんなに雨に濡れて、風邪でもひいたらどうする!!」

 怒鳴られてるのに、うれしい

 「皇兄・・これ、かえるとおたまじゃくし、落としたでしょう?」
 皇兄の前に手を差し伸べる

 昔一緒に買ったの。皇兄覚えてるかな

 「とにかく、早くここから移動するぞ。来い」

 皇兄から出た言葉は、命令的で、皇兄は私の腕を掴もうとする

 嫌だ。このままだと連れ帰されてしまう

 するりと皇兄を交わした

 「晶!」
 ふふっ。私の名前、また呼んでる

 でも、皇兄に謝らなくちゃ。かえるの足欠けちゃったの

 「あのね。おたまじゃくしは大丈夫なんだけど、かえるの方が足が欠けちゃってて、でもほんのちょっとだけだし、これはこれで愛嬌があるっていうか」

 だから、かえるを・・わたしを嫌いにならないでー

 「わかった」
 ホント!?皇兄

 「それは後から見るから、とにかく今はー」
 わかってくれてない

 「よくない。大事なものでしょう。大事なもの・・だよね?」

 この時私は、かえると自分を重ねて見ていた