私が好きな人は、私の事を幸せに出来るのか?

 会長さんの質問に、何も答えずに石段を降りてきた

 今は、皇兄を探したい。探して、私の気持ちを・・

 「皇兄~!皇・・ケホッ、ケホッ」
 喉が乾燥して、だんだん声が出なくなってきている

 普通の会話なら、声が出せるけど、大声が出せない

 「皇にぃ・・」
 双葉さんを背負っているはず。そんなに遠くには行っていないと思う

 「・・・・っ」
 左足先が痺れて、感覚がなくなってきている。地面につける事が出来ずおかしな歩き方になっていた

 「皇兄・・」
 もう、会えないの?

 今、会えなかったら、家に戻ってしまったら、もう、気持ちを伝える事が出来ない気がした

 「はぁ・・私、だめなの・・?」
 ズルズルと身体に力が入らなくなり、地面にしゃがみ込んだ先に赤と白のギンガムチェックの紙袋が落ちていた

 あの袋、ガラス細工の袋

 「あっ!」
 拾おうとして、誰かの足先に蹴飛ばされた

 「だめ!」
 思わず叫び、周りの注目を浴びるが、お構いなしに拾い上げる

 袋の中に、何が入っているのかはわからない
 でも、拾わずにはいられなくて

 もしかして、まさか・・て、偶然なんてありえるわけがない

 「どう・・して?」
 袋を開き、声にならない声が漏れる
 
 それは、かえるとおたまじゃくしのガラス細工
 偶然なんて・・・でも、私の元に戻ってきている

 あれ?良く見ると、かえるの方の後ろ左足が欠けている
 さっき、蹴られたせいかな

 ズキンと左足が疼く
 
 「クス。あなた、まるで私みたい」
 かえるに話しかけ、立ち上がると、パラパラと空から雨が落ちて来た

 私の周りの人たちが、一斉に出口へと逃げていく

 皇兄の姿は見えない

 この雨で、家に帰ったのかもしれないね

 私は人の流れとは反対の方向に歩き出した。家には帰りたくない

 気がつくと、大きな木の下に私は立っていた

 「大きな木・・」
 その木に、額をつける

 「木霊さん・・精霊さん。お願いです。私を皇兄に会わせて下さい」

 かえると、おたまじゃくしが私の元に戻ってきただけでも、奇跡に近いのに、皇兄に会いたいなんて、そんな奇跡2度も起きないよね

 それでも・・どこかで・・会えるのではないかとそう思う自分がいた