「これで、身体を拭いて、これに着替えろ」

 押入れの中に、古い巫女の白衣と赤色の袴があった
 オレは、袴で身体を拭き、白衣に着替えるよう指示した

 「ん・・」
 晶は立ち上がり、ワンピースの裾を下からまくり上げた

 「ちょ・・ちょっと待て」
 口元に手をあて、晶に背を向ける

 無意識でやってるのか・・オレが兄だから恥ずかしくないのか
 晶のまくり上げたスカートの隙間から、白い整った太ももを垣間見た

 やめろ・・頼む・・
 目は背けても、耳が晶の服を脱ぐ音を捉えている
 
 否応なしに、想像してしまう
 
 ベッチャ     床に濡れたワンピースを置いた音
 シュル、シュル  あぁ、キャミソールを下着を脱いだ・・

 くそっ!!
 こんな・・こんな晶がおかしい時に、だめだとわかっているのに、音だけで欲情してしまう

 「皇兄、出来たよ」

 「あ・・あぁ」
 息が、苦しい。早くここから出たい

 オレは晶と背中合わせに、畳一枚分離れた所に座った
 膝を抱え、額を膝につける

 「皇兄・・あの・・」
 ヒタヒタとこっちに晶が近付いてくる音がする

 「何だ」
 来るな。オレの側にくるんじゃない

 「かえるの足は皇兄に治してもらえるけど、私の足は」

 「お前、さっきから、かえる・かえるって少しは、じぶ・・んのお前、その足!」

 白衣は晶の膝下まで隠しており、そこから覗く晶の左足先が青紫色に腫れていた

 「どうしたんだ!!」

 「人に踏まれちゃって・・痛っ」
 晶は立っているのも苦痛で、トサンと床にお尻をついた

 「こんなに酷くなる前に、どうして言わなかった?」
 
 いや、石段で晶の足がおかしい事に気付いていたのに、それを確かめなかったオレが悪い

 とりあえず、足を固定しないと・・ハンカチは・・そうか双葉の手当てで使ってしまった

 だったら・・
 ビリ、ビリと自分のシャツの袖を引き千切り、晶の足にグルグルと巻いた

 「少し痛いだろうが、立つ事は出来るはずだ」

 足を手当てするオレの手に、晶が両手を乗せてきた

 「皇兄・・私、皇兄に迷惑かけてる・・?」

 「あぁ、今までで一番な」

 「そっか、じゃぁ迷惑ついでに聞いてもいい?」
 晶は、オレの手をギュッと握り締めた

 「私のこと・・好き?」