トクン・・トクン・・

 石段を登るたび、オレの鼓動が大きくなっている

 晶にも、伝わっているだろう

 「もうすぐやな晶!」

 ドクン・・

 会長が笑顔で、晶の方を振り向いた

 「そうですね」

 晶は会長に笑顔で答えている中、オレ達の繋いだ手には緊張が走った

 「双葉、お前は大丈夫か?」
 会長の目線を晶から外す為、遅れ気味の双葉に声をかける

 「わぁ、先輩心配してくれるんですか?」

 「建て前上な」
 喜んでオレに追いついてくる双葉を、軽くあしらった

 大丈夫だ。2人は気付いていない

 このまま、晶とオレの手が重なり合って・・溶け合い、混ざり合って・・永遠にひとつになれればいいのに・・


 あぁ、もう石段の頂上が見えてきた

 大きな鳥居をくぐると、晶の表情が曇り、目を閉じた

 繋いだ晶の指が徐々に動かされ、オレの指から1歩1歩離れて行く

 行くな、晶

 もう少し、一緒にいたい

 最後の指が離れて行こうとしている

 行かないで

 オレは晶の中指をしっかり掴んだ

 「こ・・!」
 晶が息を呑むのがわかる

 「神殿までいいだろ」
 
 いいよな?
 晶が恐くて見れない

 表情で拒否されたらと思うと見ることが出来ず、オレは目の前に建つ神殿だけを見ていた

 「・・ん。うん」
 
 晶がどういうつもりで、返事をしてくれたのかは分からない
 ただの気まぐれかもしれない
 
 それでも、こんな些細な事が嬉しくて・・
 
 晶・・あきら・・
 お前が好きだ・・どうしようもないくらい愛しすぎて・・例えお前が嫌がったとしても、ここから連れ去りたい

 チャリン・チャリン
 真っ先に、神殿の方へ駆け出した会長のお賽銭を入れる音がした

 パンパンと拍手を打つ音がした後、カランカランと下駄の音をたて会長が晶の元へとかけてくる

 会長が何をお願いしたのかは分からない

 ・・でも、すみません会長    

 ニコニコ顔の会長が晶の顎さきをつまんでいる

 ・・オレ、晶をもらいます

 会長が晶から手を放すと同時に、晶を抱きかかえ連れ去ろう

 晶、オレと一緒に行こうな

 会長は何も知らず、無邪気に晶に何をお願いしたのか話していた

 「神様にお願いしてしもた。早う、晶とセカンドキスが出来ますようにて」