オレと晶の周りだけ、時間が止まったようだった

 「なーんや。すごい妬ける」

 「ほんと、ほんと」

 会長がふてくされ、双葉が横で相槌をうっていた

 「あぅ・・」
 晶も首から顔にかけて赤く染まっている

 「あぁ、悪い」
 オレは急いで晶から離れた

 会長が晶の弱点の耳に触れようとした時、苦しそうに手を伸ばした晶を助け出すのに夢中で、考えていなかった
 
 オレが触れた方が、晶は蕁麻疹を出してしまう

 「こーちゃん!」
 ため息をつくオレに、会長が首に腕を回してきた

 「今から、そんなんやったら、身がもたへんよ。早う妹離れせんと」

 妹・・・
 妹だと思えるなら、どんなに楽か

 「何、言ってるんですか。生徒会長がこんな公衆の面前であんな事をして、誰が見ているか分からないんですよ。場所をわきまえて下さい」

 ビシッと言い放ち、首に回された会長の腕を引き離す

 晶がオレの首に回した腕の温もりが消えようとしている

 
 「場所わきまえれやて。相変わらず固いし。家でもこーちゃんは、あぁなんか晶?」
 会長が、不服そうに晶に尋ねていた

 「えーと・・」

 晶が返答に困ってる

 「くだらない事、晶に聞かないで下さい。オレ、失礼しますよ」
 肩をすくめ、会長に言う

 晶、もう大丈夫だな?

 オレがいなくても・・・なんて・・いない方がいいか

 「なら、俺らは神社に参拝に行こか。ここの神社縁結びの神様らしいんや」

 会長は晶の左手を握った

 縁結びの神様ね
 はっきり言うが、ご利益はないと思うぜ

 神様なんかいないと五十嵐に宣言しておきながら、晶と祭りに来るたびに、この神社に・・神様にお願いした


 『神様、僕に妹を下さい』

       願いは、まだ、かなわない

 
 晶と会長の縁結びを願うために、神殿になど行きたくない

 行きたくない


 「こ・・皇兄も一緒に行こ」
 
 最も、誘われたくない晶から、神社へと誘ってきた

 「ほ・・ほら、双葉さんと、行ったらどうかなーって」
 言って、晶はオレと双葉を交互に見た

 「皇紀先輩、私達も行きましょ。行きましょ」
 双葉が、腕を絡ませてくる

 「・・・わかったよ」

 神様はまだ、妹を好きになったオレを許してくれないのだろうか