「皇兄・・」
 気が付いた時、私は皇兄の腕に抱かれていた

 『大丈夫か?』と皇兄の目が語っており、私は笑顔で返した

 私の弱点である耳を、会長さんに触れられそうになった時、恐くて、助けてほしくて、私は腕を伸ばした

 会長さんの吐息が、耳に覆いかぶさって、鳥肌が立ち意識が崩れる寸前、皇兄の手が私の腕を掴んで、救い出してくれた

 
 皇兄・・皇兄・・・

 このまま、時間が止まればいいのに

 「なーんや。すごい妬ける」

 「ほんと、ほんと」

 会長さんが腕を組んでプクッと頬を膨らまし、双葉さんがその横で相槌をうっていた

 「あぁ、悪い」
 皇兄は、私から急いで目線を逸らすと、地面に立たせた私から離れた

 「こーちゃん!」
 会長さんが、皇兄の首に腕を回した

 「今から、そんなんやったら、身がもたへんよ。早う妹離れせんと」

 妹離れ・・
 その言葉が、ズキンと響く

 「何、言ってるんですか。生徒会長がこんな公衆の面前であんな事をして、誰が見ているか分からないんですよ。場所をわきまえて下さい」

 皇兄は、首に回された会長の腕を引き離しながら、副会長の立場として答えていた

 そっか
 皇兄は、私を助けてくれた訳じゃなくて、会長さんの立場を考えての行動だったんだ

 でも・・腕にのこる・・皇兄の温もり

 私を会長さんの腕から、『晶!』て叫んで救い出してくれたくれたあの言葉を信じたい

 「場所わきまえれやて。相変わらず固いし。家でもこーちゃんは、あぁなんか晶?」

 「えーと・・」
 
 「くだらない事、晶に聞かないで下さい。オレ、失礼しますよ」
 皇兄が肩をすくめ、呆れた様に言う

 やだ・・皇兄が行っちゃう

 「なら、俺らは神社に参拝に行こか。ここの神社縁結びの神様らしいんや」

 会長さんは私の左手を握った

 皇兄・・もう少し一緒にいたい

 「こ・・皇兄も一緒に行こ」
 勇気を出して、言ってみた

 「ほ・・ほら、双葉さんと、行ったらどうかなーって」
 言って、皇兄と双葉さんの顔を交互に見る

 「皇紀先輩、私達も行きましょ。行きましょ」
 双葉さんが、甘えた声で皇兄の右腕をとった

 「・・・わかったよ」
 皇兄はため息混じりに、うなづく

 よかった
 どんな形にしろ、もう少し皇兄と一緒にいられる