「さ・・さぁ」

 オレが振った質問に、晶は小さくそう答えた

 だよな。
 晶は、あの写真の存在すら知らないはずだ
 オレの部屋で見つけた時は、驚いただろうな

 「何よ、そんな写真。私なんて、そんな物より素敵なもの皇紀先輩にもらったのよ」

 そんな写真だと?オレには宝物なんだよ

 横で一緒に写真を覗いていた双葉を軽く睨む
 
 それに、もう双葉にあげた物などない

 「キスよ。キス。キスしてもらったの」

 この・・バカ
 何を言い出すかと思ったら・・

 「誤解を招くことを言うな。額にしただけだろ」

 晶の前で変な事を言うな!

 まぁ、誤解なんてしてもしなくても、晶には関係ないか・・

 「ほっぺにもしました」

 あー。はい、はい。したのは事実。もう何も言わない

 早く、こんな所から立ち去りたい

 幸せそうな、晶なんて見ていたくない
 ここにいたら、ぶち壊してしまいたくなる。あいつの幸せを


 「それなら、こっちも負けてへんよな。晶」

 もう、のろけ話は結構
 会長も晶もオレのいない所でやってくれ

 2人に背を向け、立ち去ろうとする


 「やぁ・・・っ」
 
 「!」

 鼻に抜けた甘いこの声!

 急いで振向くと、会長が右腕で晶の腰を引き寄せ、左手で晶の耳にかかった髪をかきあげていた

 耳は晶の弱点
 身体の中で、一番触れられると弱い部分

 晶の身体が固まっており、首筋に鳥肌が立ち始めているのが見えた

 耳に近付いている会長の吐息に必死で首を振ろうとするが、会長の手によって押さえつけられている
 
 「うぅ・・・・くぅ・・」

 カタカタと震えた晶の手が、オレの方に伸ばされる

 「あき・・晶!」

 頭で考えるより先に、身体が動いていた
 
 晶の伸ばされた手を両手でつかみ、会長の腕から引き離すと、オレの胸に引き寄せた

 カタカタと震えた晶の両腕がオレの首に回される

 「こぅ・・・にぃ・・」

 「ん・・」

 「こぅ・・ケホ、ケホ」

 「大丈夫、ゆっくり深呼吸しろ」
 晶の背中をポンポンと叩いて、柔らかい髪を撫でる

 晶の鳥肌が徐々に収まっていくのが見える

 「皇兄・・」
 ようやく、晶は落ち着きを取り戻し、笑顔をオレに見せた

 オレは、この笑顔を守れるなら・・なんだってやるよ