「私だって、負けてないわよ。皇紀先輩にプレゼントして貰ったんだから」

 双葉が、エヘンと胸を張った

 オレが、双葉にプレゼント?

 双葉はポーチから、紙袋を取り出した

 「プレゼントとか、大袈裟に言うな。ただのガラス細工だろ」

 さっきはまったく興味がなかったくせに
 コツンと双葉の頭を叩く

 「俺やて、晶にプレゼントもろたもん」
 
 双葉の発言に、対抗意識を燃やした会長が晶の身体から離れ、浴衣の袖を探り始めた

 晶の方は双葉の持つ、紙袋を黙って見ていた
 たかが、ガラス細工が入っているだけだ。何か気になるのだろうか?

 あと、晶が会長にあげたプレゼントって何だ?

 会長の手が、袖から抜き取られ、高く掲げあげられた

 「えっ!」

 あれは、オレの枕の下に入れておいた、水色のパスケース

 あの中には、晶の写真と・・すみれの花が・・

 何であれが、会長から!?

 なぜ・・?

 パスケースから、晶の方に目を落とした

 「皇兄・・これは・・」
 晶は、言葉を濁している

 お前、見付けてしまったんだな
 でなければ、ここにあるはずがない

 あのパスケースを枕の下に入れておくと、自然に心が落ち着いて、眠ることが出来た

 すみれの・・すみれの花を見ている晶の横顔

 すみれの花がオレの気持ちを表現してくれている様で、押し花にしたすみれの花も入れておいた

 すみれの花言葉 
 
  『ひそかな幸せ』  

   晶の側にいられることが、幸せで


  『ささやかな愛』

   多くは望まない。小さくてもいいから、晶からささやかな愛がもらえる事ができたら・・

 そんな、勝手な思いが詰まった水色のパスケース


 「あの・・ごめ・・」
 晶は、パスケースを勝手に持ち出した事に、責任を感じている

 オレは一呼吸置くと、パスケースを覗き込んだ

 「これ、写真写りの悪いこいつにしては、結構よく撮れてるでしょう」

 オレは全然気にしていないと・・
 お前は責任を感じなくてもいいと・・

 「こいつ、入学式に遅刻するって言ってるのに、すみれの花を見つけて、しゃがみ込んで動かないんですよ。なぁ、覚えてるか晶?」

 平気な振りをして、接してやる事しか思いつかなかった