「さー次、行きましょう。何食べます?」
 双葉は元気良く歩き始める

 まだ・・食べる気か?
 ガラス細工を選んでいた時は、腹が苦しそうだったくせに

 呆れて、何も言えん

 「あー、フランクフルト、私、あれ食べたい!!」

 浴衣の裾をまくり上げ、双葉はかけて行く
 もう少し、お淑やかにしろ。晶の浴衣なんだぞ

 「先輩、早くぅ」

 「あぁ、わかった。わかった」
 
 双葉に追いつくと、すでに、フランクフルトを一本たいらげ、2本目に突入していた

 「お前まだ、食べる気か?いい加減にしろよ」
 流石に、ついに口を出してしまう

 「まだ、2本目ですよ」

 「もう、2本目だ。それに、あぁ、ケチャップが垂れてるだろ」

 晶の浴衣を汚すな!!

 こいつ・・やはり、オレの前では猫を被っていたな

 「お前バカか」
 マスタードのかけすぎで、胸を詰まらせた双葉にオレの罵声が飛んだ

 「ゴホッツ、ゴホッツ」
 
 「ほら、お茶を飲め。あー、口にケチャップついてる」
 見ていられず、イライラしながら、それを拭い取る

 「キャッ私達、ホントの恋人同士みたいじゃありません?」

 「ある訳ないだろ」

 まったく、本当の恋人同士っていうのは・・・

 はぁ、あんな所にも堂々と、抱き合っているバカップル・・が

 「!」
 抱き合っている二人を見て、目を逸らす

 晶の小さな身体が、会長の大きな身体にスッポリと包まれていたからだ

 なんで、神はこんな悪戯をするのか

 オレに、こんな場面を見せて何が楽しいのか

 「双葉、行くぞ」
 こんな所、早く立ち去りたい

 「あーっ!やっぱりデレーとしちゃって。みっともないわよ。オニイチャン!」

 オレの横にいたはずの双葉は、抱き合う2人の元へと走っていた

 「チッ」
 舌打ちして、双葉の後をゆっくりと追う

 見たくないのに、目が2人に行ってしまう

 会長が一方的に晶を抱きしめているのではなかった
 晶の方からも、会長の背中に手を回して抱きしめている

 「はぁ・・」
 オレは、ずっと前から晶が好きでも、あいつから抱きしめられたのは1回しかないと言うのに・・


 「俺と晶はラブラブなんやもん。なぁ晶」

 「あ・・えっと」

 やっぱり、苦しいな

 晶が、他の男に呼び捨てされている光景は