「あの・・えーと」

 私は、身振り手振りで、かえるとおたまじゃくしのガラス細工を説明した

 「僕らは買ってないよ」

 「そうですか。すみませんでした」
 お辞儀をし、次のカップルの方へと目を移す

 買ったカップルの特徴と言っても、黒髪で背が高かったと言うことだけ

 私から見たら、どのカップルも背が高くしか見えない

 「もっと、詳しく特徴を聞いておけばよかった」
 
 もう、見付からないかもしれない
 会長さんの元を離れてから、時間も経ってるし戻らないと

 肩を落とし、方向転換すると、後ろから来たおばさんに、ミュールの上から左足を踏まれた

 「痛いっ!!」
 叫ぶ私に、おばさんは知らぬ顔で、足早に通り過ぎていった

 「痛たたた・・やっちゃった」
 涙目になりながら、踏まれた足の指先をほぐす

 赤くなって、しっかり靴の跡が残っている
 足の指をゆっくり上下に動かして・・うん、動く。骨は大丈夫そう
 5歩程歩いてみて、足の状態を確認する
 ピリピリと少し痛いけど、普通に歩いているように見えるよね?

 会長さんに余計な心配かけたくないし

 「さてと、戻ろうかな」
 自分を納得させ、左足になるべく負担をかけない様に、とぼとぼと歩き出す

 「お前まだ、食べる気か?いい加減にしろよ」
 私の耳にため息混じりの低く優しい声が入ってきた

 この声・・皇兄・?

 どこからだろう? 
 フランクフルトと書かれてある屋台の看板の辺りから?

 誘われるままに、声のする方に向かって行った

 「!」

 丁度、私の斜め前のフランクフルトの屋台の前に、皇兄と双葉さんが立っている

 「皇・・」
 声をかけようとして、喉の奥で息が止まった

 余りにも、2人が楽しそうだったから
 会話は聞こえないけど、皇兄の顔に笑顔がある
 背の高い双葉さんは、皇兄と釣り合いもとれていた

 声・・かけたらお邪魔虫になっちゃうね

 2人に気付かれない様に、踵を返し歩き出す

 「お前バカか」
 
 「ふにっ!」
 皇兄のバカという声に、立ち止まった
 皇兄の『バカ』と言うのは、私に対しての口癖だったからだ

 皇兄!私に気付いてくれたんだ!
 
 嬉しくて振向くと、皇兄が呆れながらも、指先で双葉さんの口元についたケチャップを取っている所だった