「待て!」
 皇兄が側にいるのが苦しくなり、逃げ出そうとした私の腕を皇兄が掴んだ

 「な・・に?」
 おそる、おそる振り向くと、皇兄は左手で頭を押え、目を閉じていた

 「お前に・・聞きたい事が山ほどある・・何から聞けばいいのか」
 ゆっくり、目を開き皇兄は私を見た
 
 「あの日、夕飯の約束をしていた日、お前の様子がおかしかったのは、オレのせいだったんだよな」

 公園で皇兄のキスシーンの画像を見てしまった日
 会長さんに、聞いたんだ
 私が、隠れて見ていたことを
 
 「ごめん・・なさい」
 
 「なんで、謝るんだ?悪いのはあんな画像を撮られたオレのせいだろ。あんなモノの為に、お前が頭を下げて、キ・・スを」

 そう。あの画像を消してもらう為の条件の会長とのキスが出来なくて、画像はまだ会長さんが持ったままだった

 「私、画像を消してもらう条件のキスが出来なくて、画像もあのままなの。もう一度、消してもらう様お願いしてみる。だから、皇兄のプライベートを守れなくてごめんね」

 皇兄にはいつも助けられてばかりなのに、肝心な時に役に立たない妹でごめん
 
 条件のキスが出来なかったのは、初キスの相手は皇兄がいいと言う私の自分勝手な想いがあったからなの
 そんな、邪な想いの為に・・結局私は、自分の事しか考えてなかったのかもしれない

 「オレは、あんな画像の為にお前を傷つけてしまったんだな」

 「あんな画像じゃないよ。私が反対の立場だったら嫌だもの。好きな人とのキスを、知らない所で誰かが見ているなんて。そんなのきっと耐えられない」

 これ以上、誰にも見せたくないよ。皇兄のあんな幸せそうな顔
 見たらきっと、皇兄とキスしたいと思うようになってしまう。私のように

 「晶・・」

 「もも~」
 遠くで会長さんの呼ぶ声がした

 「呼ばれてるみたい。行かなくちゃ」
 皇兄の手を振り解き、会長さんの声の元に歩き出す

 「晶、最後に1つだけ、お前はあの画像の為に会長と付き合っているのか?」
 
 私は、振り向かず大きく首を横に振った

 「違うよ。会長さん優しいし、私の事すごく大事にしてくれるから」
 
 本当は、皇兄に抱いた恋心を忘れる為
 酷い事をしてるって、わかってる
 でも、いつかきっと、皇兄より会長さんを好きになって、皇兄の事を笑って話せるように