「お譲ちゃん、好きな飴10個選んで」

 「はい」
 
 飴を取る籠と、ドンクを渡されると私は屋台の前でしゃがみ込んだ

 皇兄と会長さんの会話を聞いていたら、背中にいっぱい汗をかいてしまった

 いたたまれなくなってなんとか抜け出せたけど・・

 会長さん・・皇兄が私の兄だって知らないから、好き放題言うもんなぁ
 
 『彼女が出来ないから私を連れ歩いているとか』・・もう、止めて。本人がいるんだよ

 双葉さんも、勝手に皇兄を大学生にしているし・・

 「はぁ」
 カラフルな丸い飴が何種類も目の前に並べられているのを見ながらため息をついた

 皇兄の方を見ると、会長さんと何か親密に話をしている様に見える

 会長さん・・もう余計な事、皇兄に言わないで
 ますます、皇兄に顔を合わせづらくなる

 適当に考えず飴を籠に入れていると

 「これはだめ、これもやめておけ」

 と折角選んだ飴が元の位置に戻されて行った

 「あぁ、折角選んだのに・・あっ」

 私と一緒にしゃがみ込んで、飴を戻していたのは皇兄だった

 うそ、いつの間に!
 さっきまで、会長さんとお話していたはずなのに

 「これもだめだな」

 「そ・・それは・・」
 ソーダ味の水色の飴を戻されそうになった時、思わず声が出た

 「それ、好きなのに」

 「じゃぁ、残しておくか。でも、他の飴は、粗目の砂糖がついていないものを選ぶからな」

 何でだろう?太るからとか?
 首を傾げている私を他所に、皇兄は砂糖の付いていない飴をテキパキと籠に入れた

 あっという間に10個の飴が揃い、袋につめてもらう
 
 「あっお金」
 私がお金を出す前に、皇兄がお金を出していた

 「また、舐めすぎるなよ」
 飴の袋を手渡され、私の記憶が蘇る

 以前、どんぐり飴の舐めすぎで舌の表面を傷つけてしまい、しばらくご飯を食べるのも苦痛だった時があったっけ

 舌を傷つけた1つの原因は、飴の表面についた粗目の砂糖

 皇兄・・その事ちゃんと覚えていてくれていたの

 「うん、ありがと。また舌を傷つけたらやだもんね」

 ペロッと舌を出して、あっと口元に手を当てた

 「私、会長さん達探してくる」
 
 どうしよう
 思い出す。皇兄と深いキスした事を・・・