「ケホ、ケホ。ケホ、ケホ」
 日曜日になっても、乾いた咳は相変わらず続いて、昨日より咳をする間隔が短くなってきた気がする

 「大丈夫?晶ちゃん。朝ご飯食べたら、かぜ薬飲んでおきなさい」
 
 「うん」
 おかしいのは、喉だけで身体はいたって元気
 今日は何処にも出かけるつもりもないから、一日休んでいれば全快するだろう

 「皇兄、何時ごろ帰ってくるの?」

 「夕方だって言っていたけど。夕飯までには帰ってくるんじゃないかしら」

 「そう。じゃぁ、私それまで部屋で休んでる。夕飯の支度手伝うから呼んでね」
 かぜ薬のカプセルを一気に飲み干すと、自分の部屋へと向った

 「ケホ、ケホ」
 皇兄が帰ってくるまでに、この咳を治しておきたいな

 ごろんとベットに横になると、薬のせいか簡単に眠りについた



 「晶ちゃん、晶ちゃん!起きなさい。お友達がみえてるわよ」
 友達・・?いったい何の事を言っているのだろう?

 「お母さん、後は私が起こしますから」
 お母さんとは別の女の人の声?
 
 なんだろう、頭の周りがうるさい。もう少し眠っていたいのに

 「ちょっと、『もも』起きなさいってば!ももー!!」
 激しく身体を揺すられ、私は目を覚ます

 「双葉・・さん?」
 そんな訳ないか。双葉さんが私の部屋にいるはずがない。第一、私の家を知ってるはずが・・

 「もう少し、寝かせてお母さん・・」

 「寝ぼけた事、言ってんじゃないわよ。さぁ、起きて」
 
 「双葉さん!え?なんでここにいるの!?」
 目をキョロキョロさせ、私は叫んだ

 「ここまで来るの大変だったんだからね。あんたがオニイチャンに変な事言うから」
 私が会長さんに変な事?

 「何の事?」

 「呆れた、忘れたの。自分の名前は『もも』じゃないって、泣いて怒ったんでしょ」

 そう言えば、そんな事を言ったような気が・・
 あの時、皇兄とキスした後で気が動転してたんだ

 「あんたの名前、男みたいな名前ね。『もも』の方がカワイイじゃないの」

 「ははは・・そうかもしれないね」

 「言っとくけど、本名を聞かなかったオニイチャンも悪いかもしれないけど、言わなかったあなたも悪いと思うわよ。だから、オニイチャンの事は許してあげて」

 何だかんだと言って、双葉さんはお兄さん思いだと思う。それに比べて私は・・