「なぜ?私の写真・・こんな所に?」

 キョロキョロとベットの周りを見回したけど、他に変わった物はなかった

 水色って、私の好きな色

 写真は私が道端にしゃがみ込んで、スミレの花を見ている横顔だった

 高校の入学式に行く途中に、コンクリートの割れ目から咲いているスミレの花がとても凛々しく見えて、思わず立ち止まってしまったんだっけ

 「いつの間に撮ったんだろう?」
 
 本人すら、知らなかったよ
 でも、なんでこんな写真が、皇兄のベットの枕元から出てくるの?
 
 丁寧に、パスケースに入れて、大事にしているのが感じられる
 
 大事に・・・私の写真なんて大事にしているはずない・・か
 
 私の写真はフェイクで、実は本命の写真が裏に忍ばせてあるとか

 「やっぱり・・」

 私の写真の下に何か挟んである。あれ、でも写真じゃない

 透明なフィルムに挟まれた・・スミレの押し花だ


 
 「晶ちゃーん!!ちょっと買い物頼まれてくれない」
 お母さんの声に我に返った

 「はーい。今、下りて来る」

 ポケットに、パスケースを入れると、シーツを両手に洗濯機の中へ入れる
 
 お母さんに、買い物のメモを渡され外に出た

 「いい天気、日差しが眩しい。ケホ、ケホ」

 やっぱり、のどの調子がおかしいし、のどがカラカラ

 「ケホ、ケホ」

 咳をしながら、自動販売機の前に立ちお金を入れて、ミネラルウォーターのボタンを押す

 「げっ、水売り切れ・・マジかよ」

 ペットボトルのキャップを外して、水を飲もうとしていた私の横で、落胆の声がする

 へなへなと気だるそうに座り込んでいたのは、見覚えのある人

 「五十嵐・・先輩?」

 「その・・声は、桜庭 晶チャン」

 五十嵐先輩は顔を上げるも、すぐにこめかみを押さえた

 「お水・・どうぞ」

 「え?くれるの?」

 「封を開けちゃいましたけど、口はつけていませんから」

 「なーんだ。つけていないの。残念」
 ニッと笑いながら、私からペットボトルを受け取ると、先輩はゴクゴクと喉を鳴らして飲み干した

 「ふぅ、生き返った。サンキュ。昨夜、皇紀と飲みすぎちゃってさ」

 !皇兄も近くにいるの?

 「あいつは、家で寝てるよ」
 私の顔色を察してか、五十嵐先輩は即座に答えてくれた