「ふにっ」

 皇兄・・眠ってるの?

 パソコンの画面の光に照らされた皇兄の横顔

 疲れているんだね。長かった予算の件も今日で終わりと聞いてるし、安心して寝ちゃったんだ

 机の上には、おにぎりが包んであったラップと食べかけのポテトサラダが置いてあった

 ボールペンの様に落とすといけないから、それをそっと遠ざけた

 「あ・・と」
 風邪を引くといけないから、持っていた上着を皇兄の背中に羽織る

 「皇兄、お疲れ様です。私・・少しは皇兄の役に立てた?」
 声にならない声で、皇兄に尋ねる

 「・・・」

 立てていればいいなぁ。私、いつも助けられてばかりだから、何か皇兄の役に立ちたかった

 「でも、それも今日で終わりだね」

 もう、おにぎりを作る事もなくなる。この数日間、皇兄の為に料理を作る事が本当に嬉しくて、楽しくて・・それも、今日で終わった

 ねぇ、皇兄

 「こう・・にぃ。・・てきて。帰ってきて・・くれるよね?」

 「・・・」

 「や・約束。お母さんと予算の件が終わったら、家に帰ってくるって・・約束したんだよね?」

 『ただいま』って笑顔で帰ってきて。ううん笑顔じゃなくてもいい。ただ家に帰って来てくれるだけで

 「約束、守ってね」
 念を押すように呟いて、皇兄の髪に触れると同時に右手首を力強く捕まれた

 「こ・皇兄!」

 「約束、約束って、うるさい。すればいいんだろ」
 うつ伏せから、起き上がり、皇兄はつぶやいた

 「私、起こすつもりなくて、ごめ・・ん!?」

 右手は掴まれたまま、皇兄の長い左腕が私の頭の後ろに伸びてきて、皇兄の元に引き寄せられた

 「してやるよ」
 
 してやるって?
 
 低く冷たい声と共に、私の上唇にやわらかい皇兄の唇が重ねられた

 「!!皇・・やっ・・」
 引き離そうとするが、頭を抑えられて身動きがとれない

 上唇は皇兄の唇によって、何回もついばまれ、その行為は下唇へと移って行った
 
 「ん!ん」
 時折、皇兄の舌が私の唇をなぞり、何度も唇を重ねられる
 クチュ・クチュと音を立てながら、ゆっくりと皇兄の舌が私の唇に押し割って入ってくると、あっという間に私の舌が捕らえられた

 「ん・・・・・っ」

 コツン、コツンと私と皇兄の舌の間で、すもも味の飴が転がっていた