「皇紀先輩、テーブルの上におにぎり置いておきます。隣の部屋にいるので、何かあったら用件を言ってくれれば、やりますので。では、では」

 「あぁ、え、おいっ」

 オレに有無も言わせず、沢村双葉は走り去って行った

 あの、慌て様は、いったい・・

 まぁ、今日やる事と言ったら、彼女に頼むのはコピーぐらいなものだろう

 テーブルに置かれた、正三角形のおにぎりをひとつ摘む

 今日は、唐揚げとポテトサラダもついている
 
 今回はこのおにぎりに救われた。これがなかったら、未だ予算の件は片付いていなかっただろう

 ・・同時に、一度家に帰らないと・・・な

 『女の子2人に家を守らせるなんて、絶対よくないわ!!予算だか知らないけど、片付けたら帰ってらっしゃい』

 ・・と母さん喚かれた

 女の子『2人』と言うのは少し違うと思うが・・

 カタカタとパソコンを打ちながら、おにぎりを食べる

 会長は、これが終わったら打ち上げをすると言っていた
 その時に『もも』を紹介するとも。よほど『もも』がカワイイと見える



 おにぎりの味が、晶のと似ているせいか、ふとあいつが思い浮かぶ


 『ねぇ、今年は紺の水玉の浴衣と黒の紫陽花柄の浴衣どっちにしよう?』

 祭りにいく当日になると、あいつはいつも着て行く浴衣に悩んでいて

 『この前は水玉柄だったから、今年は紫陽花にしろよ』

 そして、オレの助言によって、着て行く浴衣を決めていた
 もし今年、行くとしたら『紫陽花柄』だな

 会長が祭りに行くと聞いて、つい昔を思い出してしまった


 P・とプリントボタンを押し、印刷をかける
 一部ずつ出し終わり、手元で整えると、隣の部屋のドアを開けた

 「おい、いるか?沢村」

 「・・・」

 返答がない・・?

 「これを、15部コピーしてきてほしいんだが、いないのか?」

 しばらくして

 「いましゅ。分かりました」

 と鼻声の返事が返って来た

 「お前、風邪引いたのか?」

 さっきまでは、元気だったのに

 「いえ、大丈夫でしゅ。でもうつるといけないので、書類はそこにおいて置いて下さい」

 「あぁ、じゃぁ頼む。これが終わったら、早く帰ったほうがいいぞ」

 声のする冷蔵庫の方へ声をかけると、書類をテーブルの上に置いた