「ちゃんと、大人しくこれでも舐めて待っとるんやで」
 頭を撫でられ、手渡されたのは『すもも』味の飴だった
 
 子供扱いされてる

 お皿に千切りキャベツと唐揚げをのせながら、ため息をついた

 もっと、早く会長さんにホントの事を言っておけばよかった。いつまでも隠し通せるウソなんてない

 調理室も大体片付け終わり、双葉さんが来るのを待つ

 「遅い・・?」
 いつもなら、とっくに料理を取りに来る時間なのに

 長方形のトレーに料理を乗せると、生徒会室に向かって歩き出した

 途中で、双葉さんに会えるといいんだけど・・

 なるべくゆっくり、歩幅を小さくして歩いたけれど、生徒会室への道のりはあっという間

 「着いちゃったよ」

 大きな両開きのドアの向こうには、皇兄がいるはず

 「やっぱり、私には無理」
 このドアを開けて、目の前に皇兄がいたら・・なんて考えると、とてもじゃないけど開けられない

 カチャリ

 「!」
 ゆっくりと生徒会室のドアが開いた

 「もも~!丁度良かったわ」
 出てきたのは、双葉さん

 「遅かったから、持って来ました」
 
 生徒会室から早く遠ざかりたい私は、急いで料理を手渡そうとした

 「もも、悪いけど頼まれてくれない?」

 「何をです?」

 「私、生物のレポート昨日が締切日だったんだけど出してなくてさぁ。今から、図書室へ行かないとダメなの。その間ここで、私のかわりに皇紀先輩の手伝いをしてほしいんだけど」

 「えっえー!!ダメ、出来ない。それだけは無理です」
 ブンブンブンと首がはち切れんばかりに首を振る

 「ほんの、1時間だけの話よ。大丈夫、今日はコピーを頼まれるくらいだから。皇紀先輩も会長室にこもりっきりで出てこないから」

 「でも・・」

 「これ、今日の分のおにぎりね。これだけ私から渡しておくから、後お願いね」

 そう言って、双葉さんは段取りをつけると、早々と部屋を出て行った

 広い生徒会室には、ぽつんと私ひとり

 「参ったなぁ」
 ポリポリと頭をかいて、辺りを見回す

 事実上、この部屋とドアを一枚隔てれば、皇兄と私の2人きり

 「冷蔵庫の掃除でも、しよっかな」

 仮に、皇兄が突然ドアを開けたとしても、冷蔵庫の掃除をしていれば死角になって、私がいる事に気付かない