「熱っ」
 熱い蒸気が手に触れて、思わず叫んだ

 「熱かったぁ」
 熱くジンジンと疼く指を、口元に持って行きペロっと舐めた

 「ダメッっしょ」
 そんな私の行動が静止をかけられ、あれよっという間に、流れ出ている水にその部分を入れられた

 「火傷の時は、すぐに冷やすのは基本中の基本」
 
 「そうでした」
 水でよく冷やした後、軟膏を塗ってくれたのは風紀委員の先輩だった

 名前も知らなくて、ただ・・学年は2年で風紀委員という事しかわからない
 名前を聞いても、『ナイショ』って軽くあしらわれた

 私が、毎日この調理室を自由に使えるのは、この人のおかげなのだ

 「まだ、何しようとしてたの?さっき、おにぎりを持った彼女とすれ違ったから、今日の分は終わったんでしょ」

 「はい。ただ・・その・・」
 
 「なーに?」

 「先輩に、何か作ろうかなって」

 「先輩って、俺!?」

 私の予想だにしない発言に、先輩が目を白黒させた

 「いや・・俺の分はいい。ほんとにいいって、作ってくれなくても」
 両手の平を左右に振りながら、先輩は後さずりして行った

 「迷惑・・でした?」

 でも、他にお礼の仕方が思いつかない
 調理室も自由に使えて、食材もすべて先輩が用意してくれているものなのだ
 しかも、私のおこづかいでは絶対に用意出来ない、ランク上クラスの食材ばかり
 
 「いや、俺の為に火傷や切り傷を作られたら、それこそあいつに殺され兼ねない」

 「?あいつって、あぁ、先輩は会長さんと仲がいいんですよね」
 
 突然、私を調理室に連れてきて料理を作ってほしいと言ってきた先輩
 死んじゃうとまで言って私に作らせたのは、実は食欲不振の生徒会長の為だんたんだよね

 「知ってたの?それに、『会長さん』だなんて急に他人行儀になるんだね。いつもの呼び方でいいのに」

 いつもの呼び方?なんだろう・・話が合っていない気がする

 「私、『会長さん』としか呼んだ事ないですけど・・?」

 「何言ってんの?どこの世界に自分の『 』を・・・」

 先輩の自分のから後が声が小さくて聞き取れなかった

 「君の言っている会長って・・誰の事?」

 「それは、俺の事なんやけど。俺のももに何か用か?」

 ひょいっと身体が宙に浮き、先輩から引き離された