「は・ははははは」
 激しい笑いが込み上げてくる

 「何、笑ってんだよ」
 
 「悪い。お前から、神様なんて言葉聞いたから、つい・・な」
 神には、縁遠い奴だと思っていたから

 「皇紀は、神様を信じないの?」

 「神とは、自分の中で作り出す偶想であって、いるわけがないだろ」
 Yシャツの袖を元に戻し、ブレザーを羽織る

 「お前、高校受験とか神社で神様にお願いしなかった?」

 「お生憎様、合格は実力でとったしな」

 「実力がない人間は、神様にすがるしかないんだよ。お前だってあるだろ。藁にもすがるような気持ち」
 
 晶の事をいいたいんだろう
 オレだって、最初から神を信じていないわけじゃないさ

 晶を、妹を好きになってから、何度、神に尋ねたか

 どうして、好きになった相手が妹なのですか?

 どうして、オレたちは血が繋がっているのですか?

 どうして、こんな気持ちが存在するのですか?

 どうして、どうして・・狂いそうになるくらい、神に尋ねて・・それでも答えは返ってこない


 「本当の望みを叶えて貰えた奴らにだけ神は存在し、まだの奴は神がいないと気付いているのに、認めないだけ。オレは逸早く気付いてよかったと思っている。神様なんていない」

 五十嵐に言い放つと、オレは病院を出た

 大声をあげたせいか、頭がふらつく
 心配してくれた五十嵐に、悪い事を言ったと後悔するが、身体のだるさが頭を支配する

 足元がふらつき、塀に手をついて休んでいると、後ろから五十嵐が走ってきた

 「皇紀、忘れ物」
 そう言って、手渡されたのは、晶との色違いの腕時計だった

 「大事な物なんだろ」
 
 点滴をうつ時に、外して枕元に置き忘れたんだ

 「サンキュ」
 時計を受け取り、急いで腕にはめる

 「神様にすがろうとしないオレが、こんな小さな腕時計にすがっているなんて、おかしいよな」
 
 笑いながら、体勢を整える

 「だったら、神様は信じなくて良いから、俺の言う事は信じろよ」
 
 真剣な表情の五十嵐

 「生徒会室で出る、食べ物は必ず食べる事」

 「は?」
 食えないから、点滴をしているんだが・・

 「ひと口でいいから、騙されたと思って食べてみろ。返事は?」

 「あぁ」
 五十嵐の迫力に圧され、いつになく返事をした