結局、5時間目の授業をさぼってしまい、おにぎりと豚汁を作るのに専念してしまった私

 途中抜け出して、具合の悪い桜場の様子を見に行ったけど、早退した後だった

 大丈夫なのだろうか?お見舞いに行ったほうがいいのかな?
 でも、行って余計な気を使わせてしまうかもしれないし、風邪には眠るのが一番だもんね

 それにしても・・だ
 代理人がおにぎりを取りに来るって言っていたけど、来る気配がないんですけど

 はりきって、10個も作っちゃったのに、もし誰も取りに来なかったら今日の夕飯にでもしようかな

 色々とそんな考えを巡らしていると、ガラッと扉が開いた

 「あー!いた!!」
 という大声と共に、ずかずかと彼女は入ってきた

 「ついに見つけたわよ。『もも』」

 「沢村さん」

 沢村双葉。以前、殴り合いのケンカをした相手
 ケンカの理由は、彼女が皇兄との事で、嘘をついていたからなのだけれど

 「何か用ですか?」

 「用も何も、あんたのせいで体育倉庫の掃除、私とオニイチャンでするはめになったんだからね!!」

 体育倉庫の掃除・・?

 「あっ!」
 彼女とケンカして、罰として体育倉庫の掃除を言い渡されてた事を思い出す

 すっかり、忘れていた

 「どうやら、思い出したようね」

 「ごめんなさい。会長さんにも迷惑をかけてしまった」

 沢村双葉のお兄さんは生徒会長をしていて、ケンカをした時も生徒指導の先生からもかばって貰っていたのに

 「あんたのせいで、オニイチャン、ご飯もほとんど食べてないのよ。責任とって・・あんた何作ってるの?」

 「おにぎりと、豚汁だけど」
 もしかして、代理人て彼女・・?

 食べる人って、生徒会長さん?

 「ふうん、もらっていい?これならオニイチャンも食べるかもしれない」

 「えぇ」

 「当然、生徒会室まで運んでよね」

 「え!」
 生徒会室には、皇兄がいるかもしれない。会いたいけど、皇兄は私に会いたくないはず

 「ちょっと、嫌なの?あなたに断わる権利はないはずよ。私、筆跡を変えて、あなたの分の反省文まで書いたのよ」

 「運びます」

 豚汁の鍋を両手で持ち、沢村双葉の後についていった

 つかつかと、生徒会室に入っていく彼女に対し、私はドアの前で立ち尽くした