「ごめんなさい。今は誰ともお付き合いするつもりはないんです」
 ペコリと頭を下げ、渡された手紙を相手の人に返す

 「これで、何回目?晶」
 一緒に中庭で日向ぼっこをしていた萌ちゃんが、手をついて起き上がった

 「起こしちゃって、ごめんね」

 「いちいち、対応しなくてもいいんじゃないの。大変でしょう」

 「そうだけど・・」
 萌ちゃんの隣に、ちょこんと腰掛け、空を見上げる

 髪を切った次の日から、度々、男の人より告白を受けるようになった。もう4日目だけれど、未だ状況に慣れていない

 なんでかな?髪型を変えただけで、中身は変わっていないのに

 「晶さぁ、誰かと付き合っちゃえば?そしたら、言い寄ってくる男もいなくなるよ」

 「そんな理由で、付き合えないよ。相手の人に悪いし、それにー」

 今は、皇兄への恋心を忘れるのに、いっぱいなのだ

 皇兄はもう4日間、家に帰ってきていない。私が髪を切った日に、一度だけ戻ってきたらしいんだけど眠っていた私は会えなかった

 同じ学校なのに、学年が違うと会える機会もなくて、意識しない時は廊下でもすれ違ったりしていたのに

 「晶、好きな人でも出来た?」

 「ふにっ」

 「髪型を変えたせいもあるけど、雰囲気的に綺麗になった」

 「ち・・違うよ。そんな人いないって」

 「だったら、色んな人と付き合ってみれば?まぁ、皇紀先輩みたいにカッコいい人が側にいたら、目が肥えてしまうだろうけど。そう言えば、先輩の姿余り見ないね。元気なの?」

 「う・・うん」

 元気なんだと・・思う。元気なんだよね

 お母さんには、生徒会予算の件が落ち着いたら、家に帰るって言っていたみたいだから

 「そろそろ、教室に戻ろっか。後5分で昼休みも終わるし」

 うーんと背伸びすると、萌ちゃんと一緒に教室に向かう

 教室の入口で、鞄を持った桜場とすれ違った

 「帰るの?」
 
 「あぁ、身体が重くて」
 ガサガサの声で桜場は答えた。気のせい・・?顔も赤く染まっている

 「熱、あるんじゃない?」
 そっと、桜場の額に手を当てる

 「大丈夫だって、一晩眠れば治る」
 平気を装っているものの、肩から大きく息をしている

 「晶・・俺、何だか瞼が重・・い」

 桜場の身体が膝から崩れ落ち、私は両手で彼を受止めた