2階の奥の物置のドアの周りには、箱が山積みに置かれていた

 何処かに、引越しでもするつもりなのか?

 コツンと足元に当たった箱を拾い上げると、掛け時計のシールが貼ってある

 ここに来て、5分も経たないのに見つけたオレっていったい・・
 ここまで、物置から引っ張り出して、見つけられない晶って・・

 「見つけたぞ。掛け時計」

 「・・・」

 箱を掻き分け、物置の中に入ると、大きなビーズクッションにもたれかかった晶が眠っていた

 手には軍手。頭には埃が被らない様に、バンダナを巻いている
 これだけの荷物を一人でだしたんだ。疲れもするだろう

 「あーあ」
 白い肌も誇りまみれで、まるで灰かぶり姫のよう

それでもカワイイと思う
 
 その大きな瞳で、見つめ返してくれたなら・・

 なんて・・な。オレから突き放したのに、何を都合の言い事を考えているんだろう

 ハンカチで埃を払うと、晶の身体を持ち上げ、部屋のベットへと運ぶ

 途中、スルリとバンダナが晶の頭から床に落ちた

 「!」
 
 本当なら、晶の長い髪が羽衣のようにふわふわと落ちてくるはずだった

 だが、髪はうなじが隠れる長さで・・

 「お前・・髪・・」
 ベットにそっと寝かせ、晶の短くなった髪を見下ろす

髪は黒色ではなかったけれど・・

 「ごめ・・晶・・ごめん」
 この髪は、恐らくオレのせい

「ごめ・・」

 何回謝れば、オレは許されるのだろうか?





 「出掛けるの、皇ちゃん?」
 玄関で靴を履いているオレに、母さんが声をかけた

 「あぁ、友達の家にしばらく泊まる。母さん、晶の髪」

 「皇ちゃん見た?ビックリしたわよねぇ」

 「晶は何か言ってた?」

 「校則違反に引っ掛かったとかどうとか言っていたけど。でも、すぐ乾かせるって喜んでたわよ。早速、譲さんに送る写真も撮っちゃった」

 「そう」
 父さんの事を考えて、はしゃいでいる母さんを背に家を出た

 ふゎっと夜風が吹き、オレの髪を通り抜ける

 「お前が、言葉を濁していた理由がわかった」

 「こいもちゃんに会ったんだ」
 オレが来るのを自宅の門の前で待っていた五十嵐

 「オレ、風になびく晶の長い髪が好きだった」

 「あぁ、知ってる」

 「切るとは思ってなかった」

 「彼女もお前のせいだとは思ってないよ」

  だからこそ、余計に苦しいんだ