店の外に出ると、ショーウィンドウを眺めている桜場の姿を見つける

 「お待たせ!」
 駆け寄って、桜場の腕を取る

 「うおっ!」
 何気に私を見た彼は、大きく仰け反った
 
 何・・この反応・・

 「やっぱり変?おさるさんみたい・・?」
 
 10Cm以上髪を切ったので、頭は軽くなった
 顔のラインに合わせて、シャギーを入れ、後ろ髪はうなじが隠れるくらいの長さになった

 「なんか言ってよ。桜場」

 「いや・・女って髪型ひとつで雰囲気が変わるんだなぁって」

 私的には、変かどうかを聞いているの。あまりに変すぎて言葉に出来ないとか・・?

 唇を尖らす私の額が小突かれる

 「いい。前より、このほうが良いと思う」

 「ホント?じゃぁ、何で私の方を見ないの?」

 「み・・見てるって、いや・・ヵヮィィ・・よ。10歳くらい若返ったんじゃないか」

 「え!?ほんと・・て?10歳も若返ったら、5歳児じゃない」

 「あれ、そうか?いいから、学校に戻ろうぜ。いざ、風紀委員へ」

 桜場に手を捕られ、学校に向かって歩き出す

 「あのね桜場・・私、髪を黒くしようと思ったの」
 
 桜場が、かばってくれた髪を勝手に黒くしようとしていた

 「俺も、お前の決意知ってて、止められなかったし、変わるのを見てられず、店から逃げた」

 桜場の指が、私の指に絡み合う

 「お前を見た時、髪色が変わってなくて本当に良かったと思ったよ。まっ、黒く染めて風紀委員へ行っても、意味ないしな」


 私は、髪を染められる寸前に止めた
 皇兄が好きだと言ってくれている髪の色を、変えることは出来なかった

 私自身、嫌われていても、せめて1つくらい好きだと言われている物を残したかったの

 だから、皇兄の為に伸ばし始めた髪を切った
 失恋すると髪を切りたくなるって言うけど、本当だなって

 
 
 「ねぇ、風紀委員長の所に行くのはいいけど、なんて言う?」
 頭が固そうな人だったし、逆三角形のメガネが教育ママみたいだった

 「お前さ、その、先々代の祖父が英国人だっていう証明書とかないのかよ」

 「うーん?」

 2人で頭をかしげていると、『やっと・・見つけた』という安堵の声と共に
 「あー!!」

 と私を指差して男の人が私に向かって走ってきた