晶を突き放した理由・・そんなの分かり切っている

 桜場の晶に対する気持ちが、あまりにも真っ直ぐで、嫌だ

 コンコン

 ・・とオレ達の間に扉を叩く音が割り入り、入口に五十嵐が立っていた

 「お取り込み中悪いけどさぁ、今、反対側の廊下を保健室に向かって走っていく彼女見かけたんだけど。行ってやらなくていいの?ナイト君」

 五十嵐は、両手を挙げながら、軽やかに歩み寄った

 「は?俺は今、皇先輩に」

 ムッとして桜場は、五十嵐を睨んだ。それに臆せず、五十嵐は続ける


 「俺も君に質問。彼女は君にとってなんなの?単なる同級生にしてはなんか、怪しい感じ」

 「あんたと一緒にしないでくれる?俺は女とみれば見境なしの先輩とは違う」

 「ヒュウ。これまたよくご存知で。そうだよ。女の子はみんな恋愛対象だもん」

 「俺は違う。俺にとってあいつは・・晶は・・」

 桜場は一息つくと、静かに目を閉じた
 頭の中で、考えをまとめているようだ

 そして、ゆっくり目を開け、オレの方を振り向いた

 「晶は、オレの大事な友達(ダチ)だ。友達として、俺はあいつを守りたい。平気を装いながら、泣いている姿はもう見たくない」

 「さく・・」

 「男と女の間に、友情なんてあるわけないっしょ」 

 「もういい五十嵐。桜場、晶はお前の事を聞いて、保健室に向かっているはずだ。早く行け。それと」

 ポケットから、絆創膏と所毒液を取り出し、桜場に手渡す

 「皇先輩?」

 「晶を守るんだろ。だったらこれは必需品」
 
 オレはもう、使う事はないだろう
 晶の涙も拭う事は出来ない

 桜場は一瞬、躊躇したがそれをポケットにしまった

 「さっきの質問の答え、聞きにきますから。今度は邪魔が入らない時に」
 


 「あーあ。行かせちゃっていいの?もしかして、俺ってば邪魔者だった?」
 ゴロンと畳に横になる五十嵐

 「いや、助かった。桜場の瞳は真っ直ぐで、晶に似ていてつらい」

 「そんなもんかねぇ。全然似てないと思うけど。じゃぁ、あいつがこいもちゃんをどう守るか、静観してますか?」

 「いや、予定通りオレは風紀顧問の所へ、お前は晶の所へ」

 そう指示して、考え込む

 晶が、オレの知らないところでケンカしたらしい事を・・?