私が、嘘をついていない事を証明できる人を連れてくる・・?

 桜場は、隣の女子生徒の群れの中をかき分ける様に入って行った

 『キャッ』  『何よ』  など、など、

 かき分けられた女子生徒達の悲鳴が所々に聞こえて来る

 いったい・・誰を連れてくると言うの?

 「彼がいない間に、生徒手帳出して。後が詰まっているの」
 
 「えっ」
 風紀委員の言葉に、私はリュックに手をかけた


 『出すな!出したら認めた事になる』

 
 桜場・・私・・私・・

 「ゴクン」
 私は生唾を飲み込んだ

 「出しません。私、違反なんてしていませんから」

 「あなたねぇ、そのリュックの中に手帳あるんでしょ。貸しなさい」

 「嫌です」

 取上げられそうになるリュックを、胸の中にしっかり抱え込んだ

 そうよ、嘘は言っていない。言っていな・・


 『どう言う事だよ!!』

 「!!」
 桜場の大声に、周囲の会話がピタッと止まった

 『はい。次』
 静けさの中に、一人だけ、淡々と生徒手帳を出す様指示する声が響く

 『先輩なら、証明できるだろっ』
 その冷静な声とは対照的な、桜場の熱い声

 先輩って・・桜場いったい誰と話しているの?

 リュックを持っている力が緩まり、スルリと私の手から離れて行った
 おそらく、手帳はもう見つけられているだろう

 でも・・そんな事より・・
 私は、桜場の声のする方へと歩み寄って行った

 「先輩が言ってくれれば、あいつの疑いが晴れるんだ!」
 桜場の拳がテーブルに叩き付けられ、反動でボールーペンが宙を舞った
 
 「すぐに感情的になるのは、良くないぞ。桜場」
 落ちたボールペンを拾い上げ、桜場の身体の陰から現れたのはー

 「こう・・にぃ」
 声にならない声で、私は呟いた

 「あいつ、嘘つき呼ばわりされてるんだ。このままだと染めなくてもいい髪を黒くさせられる。先輩は平気なのかよ。だってあいつは先輩のー」

 「だめ~!!桜場!」
 後ろから桜場の口を塞ぎ、シャツを引っ張った

 「お前」
 私の行動に桜場が目を白黒させた

 「やめて、もういいから」

 「いいって、どこがだよ」

 「私が髪を黒く染めればいい事だから。すみません。お騒がせしました」

 嫌がる桜場の腕を掴み、私はその場を後にした