「こいつの髪はもとからこの色だ!」

 風紀委員の抜き打ち検査で、桜場の制服はもちろん引っ掛かった

 そこまでは、2人とも予想はしてた

 桜場の制服の件より、問題視されたのは私の髪の色

 明るい栗色の私の髪は、傍から見ると、染めてある様に見えるらしい

特に太陽の元では、一部が金色に見えることもあるから余計に

 当然、それは校則違反として捉えられた

 明日までに、黒色に染めてくるように注意されたのに対し、テーブルを叩いて反発したのが桜場だった

 「お前もなんか言えよ」
 風紀委員に食ってかかった桜場の勢いに、私は目を丸くして出遅れてしまった

 「う・・うん。この髪の色は生まれつきです。父の先々代の祖父が英国の血筋で、私はその遺伝子を強く引き継いでしまっているんです」

 「そうなんだ。こいつの先々代の祖父が英・・国?ってじゃぁ、お前ハーフ?」

 「ハーフまでいかないよ。全体の血筋の3%くらいが混じってるだけの話だから」

 その血にもっとも影響を受けたのが、髪の毛だ

 小学校・中学校の時も、この髪の色は問題になったっけ

 私のこの答え方は、当時、皇兄が私に代わって、先生に説明する時に使っていた言い方

 皇兄ならもっとうまく、周りが納得するように説明するんだろうけれど、今の私にはこれが精一杯

 「それを証明するものはあるの?」

 「え?」
 
 「見たところ、瞳や眉毛、まつ毛は黒色だし、髪だけ茶色というのはおかしいでしょう。時々いるのよねぇ、血筋を調べるのが出来ないの解かっていて、嘘をつく生徒」

 「そんなっ」

 「あのなぁ先輩、こいつはこんなややこしい嘘を考えるような奴じゃない。俺が保証する」
 私の横で桜場が、胸をはった

 「君に、保証されてもねぇ。あなたも違反者で、一緒に嘘を担いだ事になるわよ」

 風紀委員はいたって冷静に答え、私に生徒手帳を出すように促した
 私達の後ろには、後から登校してきた生徒達が並んできている

 「出すな!出したら認めた事になる」
 リュックの内ポケットから生徒手帳を出そうする私に気付いた桜場が怒鳴った

 「でも・・このままだと私のせいで、桜場も・・」

 「また、それがお前の悪い癖だって言ったろ。待ってろ、お前が嘘をついていない事を証明できる人を連れてくるから」

 私の頭をポンポンと叩き、桜場はとなりの女子生徒の群れの中に入って行った