部屋のブラインドを開けると、雲ひとつ無い空だった

昨夜は晶のせいでほとんど眠れなかったが、不思議と辛くはない

「さてと」

自分の気持ちに整理をつけるように呟く

朝から晶に会っても、平常心でいられるように、普通に振舞えるようにしないとな

制服に着替え、今日の授業のテキストを鞄に入れる

「ん?」

机の上に見慣れないノートが置いてあった

表紙の右隅に『さくらば あきら』と丸文字で書かれてある

パラパラとめくると、数学の公式と一緒に授業の時に暇だったのか、花や犬の落書きも見える

「まったく、自分の名前くらい漢字で書けよ」

それに、まともに授業うけてんのか?あいつ?

授業中の風景が容易に想像できて、少しおかしくなった

これ、昨日オレに聞いてきた宿題のノートだろ
せっかく教えてやったのに、忘れて行ったら意味がないだろうが

鞄とノートを片手に部屋を出る
隣の部屋の晶の部屋のドアをノックした

シーンと反応なし

だろうな。この時間だとあいつはまだ寝ている時間

「晶、入るぞ」

一応声をかけ、ドアを開ける

「これ、オレの部屋に忘れて・・!?」

ベットには、脱ぎ散らかしたパジャマが放置してあり、晶の姿は無かった

珍しいな、晶がオレより早く起きてるなんて

学校のある日はまともに起きた事ないのに

じゃ、下にいるのか

トントンと階段を降りて、リビングに向かう

「皇ちゃん、おはよう」

「おはよう、母さん」

母さんのあいさつに答えながらも、目線は晶の姿を探していた

いない・・・・洗面所?

食器棚からカップを取り出すとコーヒーサーバーに手をかける

「はい、出来たわよ。トーストとサラダ」

母さんは、オレの分と自分の分だけテーブルに置いた

「ありがとう母さん・・・と、晶は?部屋に姿見えなかったけど」

「あら、晶ちゃん」

ふふっと母さんは笑った

「晶ちゃんもそーゆうお年頃なのよねぇ」

は・・何のことだ・・?

「お母さんも学生時代を思い出すわぁ」

母さんの昔はどうでもいい

「皇ちゃん気がつかなかった?」

「なにを?」

「晶ちゃん、きっと好きな人が出来たのよ!」

母さんは、自分だけが気が付いた晶の秘め事に夢中で

蒼ざめたオレの表情は、気付かれずに済んだ