晶は、レモン水を一口飲むと、出されたヨーグルトにジャムを乗せた

「ケンカなんて、するわけないよ。何いってんの?」

 平素を装って、晶は言っているが、口元に運ぶスプーンはかすかに震えていた

 「そう?でも・・晶ちゃん」
 母さんは首をかしげ、晶の顔を覗き込んでいる

 せっかく、嘘が言えたのに、伏せた瞼に青白いそんな表情だったら、母さんに問い詰められるのも時間の問題だな

 このまま、晶を母さんの元に置いて学校に行くか・・それとも困っている顔を黙って傍観しているか・・・

 晶とはもう、関わらない

 だが・・・こんな困惑した表情を見るのは正直、つらい

 甘いな、オレも

 晶の態度にむかついている自分と、それでも晶の事が好きな自分が交差する

 結局・・・冷酷に徹する事ができないで、助け舟をだしてしまう



 「母さんがそう思いたいんなら、思わせておこうぜ。晶」

 オレは母さんに目線を流して、肩をすくめると、晶に同意を求めた

 そして、テーブルの上から手を伸ばすと、晶の唇横に付いているヨーグルトを人差し指で拭った

 「女なんだから、もう少し行儀よく食えよ」

 「う・・ん。ありがと」

 晶の頬に赤みがさし、いつもの声のトーンに戻る

 「やっぱり、お母さんの勘違い?。でも、こうして2人見ていると、恋人同士みたいね」

 カチャン・・
 母さんの何気ない言葉に、スプーンを床に落としたのは晶だった

 晶の顔は顎のラインから徐々に、赤く染まって行くと、乾いた咳をケホケホとした

 この反応は、どういう意味なんだろうな

 「皇ちゃんは、見たままの美男子だし、晶ちゃんは幼くて、カワイイだけだと思ってたら、最近表情が女らしくなってきたし。やっぱりあれね、響さんの影響かしら?皇ちゃんもそう思わない?」

 「さぁ、どうだろう。母さんが言うんなら、そうなんじゃないの」

 適当に答えるが、そんな事、誰よりもオレが気付いている
 晶はだんだん、綺麗になった

 「まぁ、ムッとしないの皇ちゃん。悪いのは晶ちゃんを可愛く生んだお母さん。皇ちゃんも晶ちゃんみたいな可愛い彼女を見つければいいことでしょ」

 「・・・」

 晶を可愛く生んでくれた事には、感謝はする

 ・・・ただ、どうして『妹』として生んだのか