「あいつ・・何気にオレを誘ってるのか?」

ポツンと呟く言葉は、朝もやの鳥の声でかき消されていった

壁に寄りかかりながら膝を抱えたオレは、昨夜この部屋に到来したお騒がせな台風を思い出して、一人笑う

今のオレって傍から見たら怪しい奴になるんだろうな
 
そう思われてもオレには関係ないが

昨夜は本当に幸せだった

チーズケーキを『30点』と言った時の晶の表情とか

くしゃっとした苦虫をつぶした様な顔するからな・・
あの顔見たさに、ついつい意地悪でわざと低い点数を言ってしまう

でも、その後の晶の行動には驚いた
 
採点に納得のいかない晶は、ケーキを乗せた皿とオレが使ったフォークを奪い取って残りのケーキを一口で食べてしまった

「解かってんのか?」
 
世間では間接キスになるんだぜ

晶がオレのフォークを使った瞬間、うれしい反面はずかしかった

まったく・・小学生かオレは!

だが・・こんな気持ちも悪くない。そう悪くない

たとえオレの気持ちを伝えなくても、晶の傍に居られればそれでいいと思った


そう。あの瞬間までは