「オニイチャン、そんな事言ったの!!バッカじゃない」

 生徒会室から甲高い声が、ドアと通り抜け廊下まで聞こえてきていた
 
 この・・声・・『はぁ』あの女、まだいるのか・・

 生徒会室に入るとオニイチャンと呼ばれた、生徒会長が椅子に、その妹沢村双葉がテーブル端の上に腰をかけていた

 「しゃぁないやろ。俺『もも』好きなんやもん」
 机にうつぶしてポツンと呟く会長の横に沢村双葉が腕を組んでいる

 「好きなら尚更言わないわよ。あの女鈍そうだから、オニイチャンが言わなきゃ一生、気付かないかもしれないでしょ。まぁ、今時の幼稚園児でもそんな方法を信じるわけないから大丈夫だと思うけど」

 「せやけど・・気付かせるキッカケは作ってやらんと、それで恋じゃないと納得したら、俺の方に向かせるし。でないとまた、そいつの為に自己犠牲を払ってしまうさかい。お前とケンカした原因も、画像を消す為に俺の条件を呑もうとしたのも、元をたどったら・・」
 会長は言いながら、ゆっくりオレの方を真っ直ぐ見た

 「お帰り。こーちゃん。どや、今の気分は?」
 そして、真剣な表情から、スーッと意味不明な笑顔に切り替わった

 「皇紀先輩!」
 沢村(妹)はテーブルから急いで降りると、『コピーしておきました』とテーブルの上のプリントを指差した

 何でも手伝うと言って聞かないから、雑務を押し付けたが、ちゃんとやったみたいだ

 「他に手伝う事はありますか?」

 「いや、もう帰っていいよ」
 
 「嫌です。先輩が帰るまで私も帰りません。生徒会の予算の件を最後までやり終えたら、先輩とのキスが待ってますから。何もないならコーヒーでも入れてきますね」

 一方的に言われ、彼女はミニキッチンへと消えていく
 
 「どんな結果でもええから、双葉にはちゃんと答えてやって。やり方は間違っとるけど、あいつなりに、こーちゃんの事、真剣やねん」

 「それでいいんですか?オレは妹さんの事は何とも思ってないから、結果は見えてますよ」
 
 こんな時報われない恋をする妹を見守る兄の気持ちを、聞いてみたい衝動にかられた
 晶の事を妹として見ていたら、オレはどんな気持ちなんだろう?
 
 「・・複雑や、双葉が傷つくん解かってるんやからなぁ。けど俺が何言っても、自分自身で納得させへんと次に進めないっちゅのが恋やねん。だから、こーちゃんには真剣に返事してほしいんや。誰に対しても」

 自分自身で納得を・・
 
 オレは納得して次に進めるのだろうか?