「う・・うーん」
 後ろ襟首に熱い刺激が走り、私は頭をもたげた

 どのくらい時間が過ぎたの?その間の記憶が飛んでいる

 「おはよーさん」
 耳の上で会長さんの声がして、自分がしている体勢に気付いた
 私が座っているはずの丸椅子に、会長が座っていて、その膝の上に横向きで、私の頭は丁度会長さんに右上腕にもたれかかっていた

 制服のネクタイが外され、ブラウスの上から2つのボタンも外されている

 「あ・・」

 「苦しそうやったから、勝手に外させてもろた。『もも』極度の興奮状態に陥って、15分くらい気失ってしもたんや」

 「そう・・ですか」
 
 15分も・・眠ってた・・?
 
 なんだろう?後ろの首すじが、つねられた様に熱い

 「あの・・ここ、なんかなってます?」
 自分で見れない場所なので、会長さんに見てもらうことにした

 「・・いや、まぁ、『もも』が俺の元に来るように、ちょっとした印を付けた。そんなに気にする事ない。髪の毛で隠れるし」

 印?
 会長さんにもたれている間に寝跡でも残ったのかな?
 眠っている間、特に身体を動かされたとは感じなかったから、会長さんはずっと同じ体勢で私を支えていてくれたに違いない

 「あの。ありがとうございます。疲れたでしょう」

 眠っている時は、起きている時の2倍は負荷がかかるって言うから、きっと大変だったと思う

 「ぜんぜん。好きな女と一緒に居れるんやで。この上なく幸せに決まっとるやろ」


 そうだ。思い出した
 私、この人に『好きだ』と告白されたんだっけ
 そして、私が別の男に恋していると告げられた

 恋なんて、ましてや相手が皇兄ではないかと考えてしまった私は、否定するあまり、呼吸がうまく出来なくなってしまったんだ

 倒れる寸前、耳元で何かを言われた

 「あの時・・試してみればいいって・・」
 
 「あぁ、その事は忘れて。まさか、気失うてまで否定するとは思ってなかったら、堪忍な」

 恋の相手が皇兄なのかどうかを試す
 絶対ありえないと、確信してるけど・・

 「私、確かめてみます。だから、その方法、教えて下さい」

 「俺・・『もも』の覚悟を決めたその瞳、好きやなぁ」
 そう言いながら会長さんは私の耳元でその方法を告げた

 「・・それだけでいいんですか?じゃぁ大丈夫です。やってみますね」
 私はニッコリと笑った