「ほんまに、世話やける」
 会長さんは私を抱きかかえ、早歩きで廊下を歩いた

 「ちょっと、降ろしてください」
 コピー機がある雑務室が遠ざかって行く
 足をバタつかせ、両手で会長さんの背中を叩いた

 「今度は何をして、職員室に呼ばれたんや?」
 私をゆっくり床に降ろしながら、半分呆れ顔の会長さん

 何やら、大きな誤解が
 「コピーのカードキーを借りに行っただけです」

 「なんや・・そうか。俺はてっきり問題でも起こしたんやないかと、よかった」
 くしゃくしゃと頭を撫でられると会長さんの手からプリントがポテッと床に落ちた

 「これも、コピーし直しした方が」
 拾い上げるその紙には『反省文』と表題が書かれてある

 「反省・・文?」

 「『もも』には関係ないよって」
 関係ないわりに、歯切れが悪い

 「これ、私がケンカを起こしたやつのでしょ」
 図星のせいか、会長さんは言葉に詰まった
 
 職員室で注意されていた会話は、これのせい

 「私のせいで、会長さんの立場・・悪くなってごめんなさい。これ、ちゃんと書いて提出しますね」

 二枚目のプリントには『三日間の体育倉庫の掃除』とも書かれてある

 「掃除もしますね」

 桜場といい、会長さんといい、私に関わったばかりに迷惑ばかりかけてしまう
 
 「こんなん、テキトーにしとけばええ。それより『もも』に聞きたい事あるんやけど。雑務室行こか」

 繋がれた手のひらが熱い
 会長の後姿を見ると、顎のラインから耳にかけて赤く染まっていた

 まさか、まさか、会長さんの前に回り込み見上げると、真っ赤な顔の会長さんがいた

 「あーっ!!」
 
 「なんや!?」
 私の大声に周囲を見回す会長さん

 やっぱり、やっぱりそう。そしてここも・・
 会長さんの手首に指先を当てると、ドクッ・ドクッ・ドクッと脈が通常より3倍速く鼓動していた

 「どうしたん?」

 「同じ症状なんです」

 「は?」

 「だから、ここ最近おかしいんです。私の身体。妙に熱いって言うか、ほてってるっていうか」


 大声をあげたせいで、廊下にいた生徒達の視線が私達に集中した

 「『もも!』こんなとこで、そんな話したらあかん」

 「へ?」
 なんで?
 変な病気だから?聞かれたらまずい病気なの?

 私は脇をかかえられ、雑務室に連れ込まれた