晶にとって、気を許せる特別な存在はオレだけ
 その事実が、晶の兄として生まれてよかったと思える光だった

 年齢と共に成長していく晶の周りには、オレ以外の特別な存在が次第に増えて行く

 桜場もその特別のひとり
 考えたくはないが、晶の中でオレの存在が疎ましくなってきているのかもしれない

 「あいつ・・何か皇先輩にしたんですか?」
 1人考え込むオレに、桜場がオズオズと訪ねて来た

 「いや・・なんで?」
 とりあえず、首を横に振る
 されたのか、オレがしたのか、今回はまったく解からず、お手上げ状態

 「授業中も上の空だと思ったら、何かを思い出して机に塞ぎ込んだり、皇先輩に対してもよそよそしいというか・・他人行儀の態度だし、てっきり何かやらかしたんじゃないかと・・もしそうならあまり怒らないでやってほしいかなって。あぁ、俺何言ってんだろ。すみません。生意気いって」

 「お前、晶の事好きなの?」
 クラスメイトにしては、晶の事をよく見ているな・・と

 「へっ!?」
 チャポンと音を立てて、桜場の片足が池の中にめり込んだ
 
 この反応・・まんざらでもないという事か?


 「冗談はやめて下さい。あんな天然系」
 言った後から、『しまった』という桜場の表情、そしてオレをまじまじと見る目線

 天然・・ね。うーむ。的は得てるな

 「いや、とっても自然すぎて俺にはちょっと手に負えないというか」

 おいおい、フォローになっていない

 「ついていけないというか・・妹、そう妹みたいなもんです」
 ほぅ・・と息を吐きながら言い切ると、池から足が抜かれた

 妹・・ね
 最初は妹でも、いずれ女として意識する日が訪れるかも知れない

 オレのように・・