その後のスマホの中のオレは、キスしている相手と舌を絡ませ、直後、相手の女の身体がうなだれ、崩れ落ちた所でプツンと画像が切れた

 思い出した
 先週の日曜にこの公園で知らない女とキスした事を・・
 
 晶の事で苛立っていたのと、五十嵐の挑発に乗せられていたな

 沢村双葉はその時にここに居合わせたわけだ

 「私もこんなキスしてみたい。包み込むような、優しいキス」
 うっとりとした目で携帯のボタンを押し、同じ画像が流れ出す

 当たり前だ。この時オレは、相手の女を晶だと思いながらキスしたんだから

 「いいから動画を消せ」

 「キスしてくれたら、消します」

 こうなるとまた、力ずくで携帯を奪い取るしかないか
 
 沢村双葉の左腕を掴み、引っ張ると右手に持っている携帯を取り上げる
 「!」
 携帯画面を見ると『送信中』という文字が出ていた

 「先輩が無理やり消そうとしたから、こうしたんです」

 「今の画像、何処に送ったんだ!!」
 とりあえず、沢村双葉の携帯の動画を消し、リダイヤルで相手先を見るが、名前までは出ていない

 「あーあ。これで全部皇紀先輩の画像なくなっちゃった」

 「・・・」

 沢村会長の妹だと思って、晶と重ねて見てしまったのは大きな間違いだ
 晶にはこんな姑息な考えは思いつかない

 「怒ってます?」

 「・・・」

 タバコに火を付け、一服吸うと左手で彼女の顎を持ち上げた

 「キスしてくれるんですか?」

 「黙れ。ベラベラ喋っていると、舌を噛むだろ」

 親指で彼女の唇をなぞる。タバコを持つ手を彼女の肩にかけた

 「先輩、タバコ消してください」

 「なんで?あんたはオレとキスできればいいんだろ。早く済ませて、送信先を教えてもらいたいんでね」

 トンッと彼女がオレの胸を両手を付いて離れた

 「私の事好きじゃなくても、あの動画の様な優しいキスをしてほしい」
 オレを半分脅迫しておいて今更何を言い出すのやら・・
  
 「無理だ」

 「それじゃぁ、生徒会予算のを毎日手伝いますから、やり遂げたら軽くでも構わないので心のこもったキスをください。約束ですよ」

 沢村双葉は一方的に言い放つと、オレのシャツを握り締め駆けて行った

 勝手に決めるな・・

 約束といえば・・晶はもう家に帰ってきているのだろうか