「やめたら?」
 タバコを咥える直前に沢村双葉からタバコを奪い取り、自分が咥えた

 偏見かもしれないが、女がタバコを吸う姿を見ると、どうも嫌悪感が走る

 「皇紀先輩、まさか・・女だからタバコは身体に良くないとか言う考えなんですか?」

 「別に、あんたの身体がどうなろうが関係ないが、オレの前では吸うな」

 「はーい。皇紀先輩って、クールに見えて実は優しいですよね。今も私の身体を気遣ってくれて、そーゆうとこ好きなんです」

 はぁ、何処をどうすれば、そんな考え方になるんだか

 オレはただ、沢村会長の妹だと聞いて少し晶と重ねたのかもしれない。あいつにはタバコは吸ってほしくはないから

 「それよりお前、オレがここにいるのを知っているような口ぶりだったな」

 タバコを持っていることも最初から知っている様だった

 「だって、私ここで皇紀先輩の事好きになったんですもの」

 「は?」

 「ねぇ先輩、キスして下さい」

 この女・・オレの質問を全然聞いてない
 この公園に来たのも、ただの偶然か?だったらもう、ここにいる理由もない

 方向を転換し、公園出口に向かおうとするオレのシャツを沢村双葉はしっかり掴んでいた

 「あー、何?離せよ。オレもう帰りたいんだけど」

 「キス、してくれたら離します」

 まったく・・。溜息と共に、シャツのボタンを素早く外し、スルリとシャツを脱いだ

 「あー!」
 シャツを掴んだ彼女の手がブラリと落ちた

 「これで離れただろ。余り面倒な事するな」
 
 「ストレートに言わないと、皇紀先輩キスしてくれないでしょ」
 オレのシャツを胸に抱きしめた

 「キス、キスってオレ、あんたの事好きじゃない。そんな男とキスしても嬉しくないだろ」
 溜息を吐きながら言うと、彼女はポーチから携帯電話を取り出した

 「じゃぁ、先輩はこの女が好きだからこんなキスしたんですか?」

 スマホの画面がオレに向けられ、昼間のこ公園が映し出され、映像のオレが女の唇を親指でなぞっていた。その後に、女の顔を両手で抱え、上唇から口付けている

 「あんた悪趣味だな。人の色事をご丁寧に動画で写して、消せよ」

 「嫌です。このキスシーンを見て、皇紀先輩の事好きになったから」

 彼女から携帯を取り上げようとしがた、スルリと逃げられる