何か言って誤魔化さないと・・えっと、えっと

 「バレーボールの授業で、顔面レシーブしちゃって」

 突然思いついたのが、この言い訳
 ちょっと苦しい?でも、それしか今は思いつかないよ

 皇兄の手から逃れ、小さく溜息をついた

 「はぁ、まったく」

 皇兄の溜息が私の胸をつく

 「皇兄には、見られたくなかったのに。やっぱり変だよね」

 見えないけど、皇兄の呆れている表情が手に取るようにわかる
 
 きっと、バカだって言われる

 「ちゃんとすぐに冷やしたのか?」

 「一応」

 「もっと、良く見せてみろよ」

 肩を掴まれ、顎の下を持ち上げられる

 「う・・。お願い、もう見ないで。酷いのわかってるから」

 改めて、皇兄に酷い顔だって言われたくないよ

 「確かに・・酷いな」

 だから、もう見ないで・・て

 「ふふっ」

 私の気持ちを他所に、皇兄は目を細めて笑う

 なんで、笑うの!?

 「カワイイよ。晶」

 「え?」

 何て言ったの?

 皇兄は私の前髪をかき上げながら、頭をなでた

 「化粧しなくても、痣なんて隠さなくても、お前カワイイよ」

 「こ・・皇兄・・」

 自分の顔が、赤く火照ってくるのを感じた
 痣の部分に血液が集中する

 「このまま、お前を連れ去りたい」

 私の背丈にかがんだ皇兄は、優しく私を抱き寄せた
 
 温かい。私も皇兄と一緒にいたい

 「うん。私を連れてって、皇兄」

 私も両腕を皇兄の背中にまわした
 2人の心臓がデュエットしているかのように鳴り響いている

 「晶、心臓の音すごいな」

 「皇兄だって、今にも飛び出しそうだよ」
 
 お互いに顔を見合わせ、笑い合った
 ほんの些細な事だけど、幸せだと感じる

 「でもオレ、その服の色は嫌だな。晶は・・そう水色のワンピースでこう・・」

 「首の後ろをリボンで縛るフォルターネックのワンピースでしょ。裾に白の水玉が描かれてあるやつ」

 「あぁ、そっちの方がよく似合うと思う」

 私と同じ視線で、同じ事を考えていてくれるのがすごくうれしかった

 「待ってて、今着替えてくるから」
 
 「あぁ」
 
 急いで部屋を出て、自分の部屋に戻ろうとする私の腕が掴まれた

 「あら、可愛くなったじゃないの」

 振り向くと、お母さんが立っていた