…12年前、緋女が8歳の頃にくれた、【大切なもの】。床に落とすなんて最悪だ。

「失礼致しました緋女様!」

素早く拾いあげる。

「チトセ……」

あぁ、初めて緋女様に叱られる…そう思い顔を伏せていると

「綺麗なブローチだな。本物のエメラルドのようだったが、チトセも高級なものを持っているんだな」

…緋女がサラッとそう言った。

「緋女様?」

「ん?なんだ?」

「いえ……なんでもございません」

緋女が無垢な笑顔を向けためチトセはなにも言えなくなった。