「透李っち！話があるんすけど！」

あむが透李に声をかける。最近ベタベタしても反応が薄いからなにか変化をつけたかっただけなのだが自分でもわかるくらい大胆な誘い方をしてしまった。

「……」

透李は面食らったような顔をしていたがあむから目を外すと歩きだす。

「透李っち？」

「貴様が話があると言ったのだろう、このようなあけすけな場所で聞く程無粋ではない」

落ち着いて話せる場所に行こうと言うことらしい。あむは透李について行く。

すると透李はカウンセリングルームに入った。透李は直ぐに相談者ソファに座り、ふんぞり返る。

「それで？話とはなんだ？」

透李が直ぐに本題に入る。あむはとりあえず2人分コーヒーを入れてお互いのコーヒーに角砂糖を2個入れて、ローテーブルに置く。

あむがなかなか話出さないので透李が口を開こうとしたところであむが口を挟む。

「おそ───」

「あの！」

あむが口を挟むと透李は大人しく口を閉じ、あむの言葉を待った。

「透李っちって、おらちのこと嫌いっすか？」

本当はすきか聞きたかったが好きでは無いと言われたら耐えられない。遠回しにだが、これをとりあえず否定して欲しかった。

「下らぬ話だな…そう見えているのであれば貴様の目は節穴だ」

特に声色も変えず透李は淡々と答えた。

「じゃあ……好き…………っすか？」

「……」

透李が黙りこみ、コーヒーを口に含む。ローテーブルにコーヒーを置き、ため息を着く。

「……何を求めている」

透李の声に不機嫌が含まれる。確かに突然こんなこと聞かれたら驚くだろうが、あむにとってはとても重要なことだった。

「人に応えを求めるならば自分から答えよ」

その通りだ。あむは震える唇でゆっくり言葉を紡ぐ。

「すき……です」

「………」

「おらちは……透李っちが、すき…っす」

「……」

「だ、だから…」

声も震えてきてこの後の言葉が出ない。透李は何も言わずいつも通りのポーカーフェイスであむの言葉を待っている。何も言えないと言うよりは何も言わない、という顔だ。あむの話を中断させないようにしているようだ。
なら…彼の気持ちに応えなければいけない。

「だから……付き合ってくださいっす！」

……あむがそういって顔をふせるとまた透李がコーヒーを飲む音がカウンセリングルームに響く。自分の心臓の音と透李のコーヒーを飲み下す音だけが響き、透李のカップがローテーブルに置かれる。
透李がフッと笑うような声が聞こえた。

「我は神の加護を持ちし者だ。ただの人間と子を成すつもりは無い」

透李がいきなりぶっ飛んだ話をし、すっと立ち上がると特に告白に返事もせずに部屋を出ていってしまう。

「透李っち！」

部屋を出た透李を追いかけてきたあむの呼びかけにも応じず、振り返りもせず透李は行ってしまった。

「おらちの勇気はなんだったんすか……」

結局また透李に心を乱されてあむはその場にへなへなと座り込んだ。