俺は頭を抱えていた。緋女様にボーナスを貰った次の日、実家に仕送りした後余ったお金でワインを買おうと思ったのに足が勝手にカジノに向き、また借金を増やしてしまった。明日までに30万ないと次こそヤのつく人達に魚のエサ兼酒の肴話にされてしまう。

身震いをした俺はあむに話を聞いてもらいにカウンセリングルームに向かっていた。
途中、厨房から妙に甘い匂いと珍しい血の匂いがし、そっと覗くとイリスと草ヶ谷くんが2人で話しながら何かを作っている。血の匂いは草ヶ谷くんから漂っているみたいだ。料理に慣れていないからか指を切って絆創膏を貼っていた。……包帯の上から。

血の匂いに反応したのを少し恥じ、立ち去ろうとすると2人の会話が聞こえてくる。

「紫煙の十六夜」

「はい」

透李がいつになく弱気な声だ。怪しい雰囲気に一気に不安になる。

「…奴は、あむは、望ましい反応をするだろうか…?」

なんだ、あむのことか。そうだよな。彼はあむが大好きなようだ。心配することは無い。

「喜んでくれますよ、きっと。お姉ちゃんの誕生日までまだもう少しありますし頑張りましょう!草ヶ谷さんお姉ちゃんのこと考えてる時すごく楽しそうだし、きっとうまく行きますよ!」

そんな言葉を聞きながら、俺はカウンセリングルームへと向かうため、踵を返そうとして……盛大にコケた。

この後、あむに質問されたが、知らないフリするのに精一杯だった。