「我が名は草ヶ谷 透李!神の加護を持ちし者!この地を楽園至らしめんとして現れた!よろしく頼むぞ、貴様ら」

僕が高らかに告げると、目の前のこれからの主の女性と同僚になる男性は固まる。まぁ、予想していた反応である。そりゃそうだよなと自分でも思う。
そもそも僕は厨二病ではない。これはキャラだ。鎧みたいなものだ。普段の僕は気弱で小心者。こんな僕が強気に話せるようになるための鎧がこの眼帯、包帯、軍服というコテコテ装備だ。

その後2人の名前を聞いた。女性は海神 緋女、男性は蛛藍 蜘歳というらしい。
僕は緋女様を炎系統の名前で、チトセさんは冷徹の玄武とニックネームで呼ぶことにする。うん、我ながら厨二病キャラが板に付いてきた。

ある程度説明を聞いて超ホワイトな職場だなぁと思いながらポーカーフェイスを崩さずに部屋を出る。するとそこに、女性と比べても小さい方の僕よりさらに小さい女性が立っていた。背中からは8本の不気味な蟲の足のようなものが生えているが、手も足もちゃんと人間の形だ。コスプレ?と思いながら顔を見ると、ものすごい美人さんなことが見てとれた。

彼女は微笑んで

「どうも」

と会釈してくれた。
それに返そうと思ったがなんと返していいか分からず緊張してしまった僕は彼女を無視して歩き出してしまった。

『おい』

と小さく呟いたフログメントが彼女に頭を下げていた。

彼女が

「なんすかあれ。感じ悪いっすね」

という小さく呟いたのも聞こえてしまった。
パタン、と音が聞こえ彼女が緋女様の部屋に入ってから、小さく呟く。

「…綺麗な人だったな」