「あむ」

「はい、なんすか、透李っち」

「僕の学園でご挨拶が終わったら、ご両親にも挨拶に行こうね」

「はい、おらちの親にも、透李っちの親御さんにも会いたいっす」

透李はそれを聞いて逡巡する。透李はあまり親と上手くいっていないし、実はチトセは志瑞也だけでなく家にも姉さんくらいは来ないかと声を掛けたが来なかったらしい。思わず俯く。

「…僕は……」

「大丈夫っすよ」

「え?」

あむが穏やかな声で力強く言った言葉に透李は顔を上げる。するとあむは優しく笑っていた。そして言葉を続ける。

「どんなに反対されても、どんなに酷いこと言われてもおらちがいるっす。もう今は透李っちのお嫁さんっすよ?今頃反対してももう遅いっていってやるっす!」

あむが明るくそう言った。透李は熱いものが胸に込み上げて来るのを抑えながら

「うん…」

と言葉を絞り出した。目には涙が溜まり今にもこぼれ落ちそうになる。

「あはは、泣いてるんすか透李っち。眼帯が濡れちゃうっすよ?」

「煩い…この眼帯をしていなければ封印されし我の右目が暴れだしてしまうだろう」

透李はそう言って右目を抑えるふりをして目を拭った。

「あむ」

「ふふ、次はどうしたんすか?」

あむがそう聞くと透李はあむに近づき、自然に唇を奪う。

「透李…──」

言葉を紡ごうとするあむの唇に、そっと人差し指を当て、透李が言葉を続ける。

「これからも共に人生を歩もう」

透李の指があむの唇からそっとはずれる。あむはそれを皮切りににっこり笑った。

「はい!よろしくっす、透李っち!」

『誓いのキスを』

フログメントの冗談めかした言葉に2人で笑い、もう一度誓いのキスをした。