透李は朝変なことを言った自覚はあったがそんなことは今は関係ない、まずは仕事が最優先である。あむが部屋から出ていってしまったので今日はひとりで食堂に向かう。いつもこの時間に緋女が食事を終えるので挨拶してから透李も食事を摂る。それが日課だ。

透李が食堂のドアを開けると今日も優雅に食後のコーヒーを飲んでいる緋女とその緋女を見守るチトセがいた。

「目覚めたか天啓を受けし我が主よ」

今日もスイッチを入れ、いつも通りの挨拶をする。
緋女とチトセも挨拶を返してきたが、緋女が不思議そうに問うてきた。

「透李、あむはどうした?」

ピシッと固まる。しかし、そんなことで動揺してると悟られる訳には行かない。透李は呆れた表情と声で続ける。

「ふん、全く。我と蜘蛛女が必ずしも共にいると思うな」

「それもそうか」

緋女はさほど気にした様子もなく、コーヒーに口をつけようとして思い出したようにチトセに声をかけた。

「そうだチトセ、この間言っていた結婚の件だが…──」

「緋女様、そのお話はお部屋でゆっくり致しましょう」

「ん?そうか?」

……パワーワードが聞こえた気がするが、ここで反応しては透李らしくない。透李は2人の会話を気にしてないふりをして自分の朝食を準備しに厨房へ向かった。