仲直りした2人だが依然距離は縮まらない。
透李は抱きしめただけで充分だと言った手前何も出来ないし、あむも透李がそう言ってくれたことに甘えて何も出来ていない。たまに透李が思い出したように寝る前にあむにキスすることはあるがそれでもそそくさと部屋に帰ってしまう。

何か決定的に2人に変化があれば2人も動きやすいのだが2人とも糸口を掴めずにいた。


今日もあむは朝に早起きして透李の部屋に足を運ぶ。透李は朝が劇的に弱い。最近は気が抜けたのか益々起きなくなり、あむをベッドに引きずり込んで一緒に寝ようとしてくる時まである。それをちゃんと正して起こすのもあむの仕事だ。

部屋に入りシャッと真っ黒なカーテンを開けて、透李を覆う毛布を捲る。透李は少し寒いのか寝返りを打ったが起きる気配は無い。

「透李っちー?朝っすよー?」

肩をトントン叩いて起こそうとするが起きない。フログメントも透李の頭にのって、ぺちぺちと額を叩く。

「起きないっすねー」

『こいつの異常な睡眠欲は今に始まったことでは無い』

フログメントがそう言って、ため息をつく。

「透李っちー!」

呼びかけて少し強めに肩を叩く。
すると透李がパチっと目を開ける。あむを視認すると今日も引きずり込もうとしてくる。

「透李っち!もう朝っすよ!」

そういうと透李がぽつりと呟く。

「だって、最近ずっとあむといても時間足りないし…」

そこまでいって透李ははっとして飛び起きる。口元を覆い真っ赤になってあむを見る。あむも真っ赤になって何も言えず部屋から出ていってしまう。


「あぁぁぁ…」

透李は自分の発言の恥ずかしさに悶えながら仕事の準備をしたのだった。