あむの誕生日、厨房ではあむの声が元気に響く。

「透李っち、混ぜるのが足りないっす、上手く膨らまないっすよ!」

「透李っち、ちょっと手貸して下さいっす!」

「透李っち、クリームは混ぜすぎちゃダメっすよ!」

透李とあむは2人でケーキを作っていた。

「あむ、お米炊けたよ」

「おー!綺麗っすね。スポンジにクリーム塗るのは難しいので透李っちはおにぎり作ってくださいっす。……梅干しはなしで」

「うん」

結局、あむへのサプライズは出来なかったが、透李とあむは一緒に料理(?)とケーキ作りをすることにした。あむも料理は初心者だったが、やってみるとみるみる成長し、ケーキも一発で上手くいった。頑張っているイリスは爆発するのに。

「出来たっすか?」

「出来たよ、どうかな?」

「おらちの手より大きいからいっぱい食べれてうれしいっす!」

2人でおにぎり(大半塩むすび)とケーキをバスケットに入れ、王宮の中庭に出る。朝から作ったら時間はもうお昼。時間もちょうどいい。中庭の芝生に座って2人でおにぎりパーティをした。

「あむ、誕生日おめでとう」

「ありがとうっす!」

「誕生日プレゼント、買えなくてごめんね」

「最高のものもらったっす!」

「え?」

「この時間と、2人きりの時間、これを作った気持ち。それと…大好きな笑顔も」

「…っ……ば、馬鹿か貴様は…」

透李は咄嗟に取り繕ったが真っ赤な顔は隠せていなかった。



「「あ」」

2人でおにぎりとケーキワンホールを平らげ、厨房に戻ろうとしていると、廊下で仲直りしたのか微笑みあっているなんスーと氷麗に鉢あった。2人は昼食が終わったようで仕事に向かおうとしていたようだが、なんスーがまた何も無いのにつまづき……透李を押し倒した。

「きさっ──!」

透李が叫ぼうとした瞬間

「女の子がダメなら男性ってことですか!?」

っという氷麗の叫びと共に、なんスーが凍らされていた。

「誤認がすぎるぞ、極夜の黎明…」

という透李の小さな呟きは氷麗に届かなかったようで、氷麗はまた走り去ってしまった。

次の誤解は弁明が大変そうである。

まぁ、あむと透李にはなんにも関係ないのだが……。