あむはなんスーにコーヒーを入れ、なんスーに差し出す。そして向かい側に座り、仕事をはじめた。

「今日はどうしたんすか?」

優しく問いかけるとなんスーがニコッと笑って話し出す。

「あむにぜひイカサマに協力して欲しくて…もちろん報酬も───」

なんスーの悩みを真剣に聞いた自分が馬鹿だった。あむは即答する。

「嫌っす」

しかしなんスーは食い下がる。

「そこをなんとか!絶対勝つから」

「勝った試しがないっす」

「協力した試しがないだろ!」

「毎回負けて数十、酷い時は数百借金増やすやつに貸す力はないっす」

なんスーは頭をかかえる。彼はハーフヴァンパイアで緋女のアーキビストとして働いている。相当なギャンブラーでゲーム(賭博)もブラフも普通に上手いのだが、勝つためには手段も選ばない。毎回イカサマがバレて生活費を溶かし、借金を作る。緋女のアーキビストの仕事は資料整理が多く彼は目がいいのでかなり仕事が早い。緋女からの給料も良いようでそれで借金を返してはまた借金を作ってくる。

「で、今はいくら?」

「……あと30万、今日中に払わないと死ぬかもしれない」

「大丈夫っす。なんスーはそんなもろくないっす」

「ご無体な!?」

ご無体なってなんだ?人でなしとかって意味?まぁ人じゃないしな。そう思いながら呆れてため息を着く、やれやれとした顔をしてやった。

「はぁ……わかった。執事長に頭下げるよ…」

結局彼はいつも返済が間に合わない時はチトセにお金を借りている。この王宮はだいぶホワイトだがチトセだけ毎日緋女のお世話や仕事を手伝いつつ、足りない仕事を全てこなす。完全ブラックなのだが、その分なんスーに軽く何百万とかせることもあるのだろう。稼いでいる……。

「それで、あむはどうしたの?」

なんスーの雰囲気が変わり、彼は真剣な顔をする。あむはなんスーにここ数日のことを話し出した。