あむは厨房がなんだか騒がしいなと思い厨房を覗く。
すると、イリスと透李が2人で何故か何かを作っていた。さらに何故か透李がめちゃくちゃ真剣で楽しそうである。透李はどんなことにも真剣だが、料理やお菓子は食べる専門で作る方では無い。しかし、楽しそうに作っているということは……?そうか、イリスと一緒だからだ。
やっぱりそうか…あむはそう思い、2人が気づく前に厨房を後にした。厨房からはあむの大好きなショートケーキの香りが漂っていたが、今のあむは自分の涙のしょっぱい匂いしか感じられなかった。


泣きながら廊下を歩いているといつも通り緋女が凛々しい軍服の姿でチトセを連れて廊下を歩いている。ふと緋女がその場で立ち止まる。するといつも控えめにしているチトセが人目も憚らず、緋女に顔を寄せた。…まるで、あの時の2人のように。

すぐ2人はあむに気づき気まずい雰囲気もなく笑いかけてきた。チトセは相変わらず余裕そうな笑みを浮かべ緋女は泣いているあむに気づき笑顔から心配そうな顔に変わっていく。

「あむ?どうした?なにかあったのか?」

緋女があむに駆け寄って問いかける。

「いえ、ちょと…邪魔してごめんっす…」

2人の脇を抜けようとすると、チトセの緋女を心配する声が聞こえる。

「緋女様、目に入ったゴミは大丈夫ですか?」

は?

「あぁ…すっかり。チトセが見てくれたからな。それよりあむが心配だ」

ん?

「大丈夫ですよ。ほっておいて欲しいのでしょう。気にしないように致しましょう」

「そうか……?」

目にゴミが…?見てあげた……?あの距離感で気まずくなく、笑いかけて話せる…理由は?う、嘘……。

あむは自分の勘違いだったのではないか?と思い、カウンセリングルームに急ぎ、カウンセリングルームに入った瞬間、

「うわぁぁぁぁ!」

と恥ずかしさが増して叫ぶ。

「うわ、うるさっ。え、なに?そんなびびる?」

カウンセリングルームの相談者用ソファにはなんスーが我が物顔で座っていた。

「相談聞いてもらっていい?終わったらあむのも聞いてあげる」

なんスーがあむに爽やかに笑いかけた。